また会おう……友よ……

 by ヴァミリオ

 

*[ヘルク]

 

Helck 12 (12) (裏少年サンデーコミックス)

Helck 12 (12) (裏少年サンデーコミックス)

 

評価 10/10

 

 
裏サンデーというのはケンガンアシュラ、

モブサイコなど面白い試みをする漫画を送り出す、
web上のサンデーでけっこう厳しい勝ち抜き連載などをしていたりします。
私はケンイチがあのような終わり方をした裏に

サンデー本誌の編集長の傲慢があることを知り、
サンデーコミックスを買わないという誓いを立てていました。
偶然も偶然。この漫画が一巻だけ立ち読みできたので読み始めました。

 


主人公ヘルクは人間で在りながら魔王を決める戦いに出場し、
その「人間を滅ぼす」という態度から魔族達からも人気が出てしまうのだが、
それを見た魔王すら越える四天王ヴァミリオが流石に訝しみ、
彼の行動を監視し始めるが────

 


という感じで始まっていくのですが、

最初はギャグ漫画だと思っていたのです。
ただ、その奥に熱量……ストーリー漫画としてのそれを感じて、


「おかしい……ギャグ漫画っぽいし、

登場人物もすごいギャグっぽいのにひっかかる」


そう感じながら読み進めて行くうちに一巻最後の展開。
普段だったら気に求めていません。
ただ、奥に潜む熱量が私には見えました。

だから、kindleで二巻目を購入。
三巻目を……四巻目をと結局全巻買ってしまいました(笑)。
読み進めて行く内に、テンプレ勇者や魔族を使った

入り易い世界観の奥に潜むシリアスな世界の秘密。
最初はちょっとミサワっぽい感じの主人公ヘルクや、

ヒロインである四天王ヴァミリオ。
好漢が集う魔族達。翻って人間の浅ましさ、

邪悪さがこれでもかと描かれた後に、
ヘルクが人間を滅ぼすに至る心の変化。

彼と彼の仲間達。最愛の弟。
そして、彼らの死。人類の支配階級が行っていた邪悪な秘術。
謎が明らかになり、新たなる謎を呼びつつも、

ストーリーは展開して行きます。
正直、読んでいて辛くなるシーンもありますが、

そのサジ加減が絶妙というか。
初期のギャグテイストっぽいイベントや演出も挟みつつ、
途中からの旅の仲間ピウィや味方の魔王軍たちの和気藹々さが、
シリアスさや辛さを和らげてくれます。


一応、今年の5月に最終刊が発売されたのでネタバレは控えておきます。
ただ、私が絶賛するエンディングが待ち受けているので

そこに絶望はないとだけ言っておきます。


連載で追っていきたかったなぁと思わせるものがありました。
世界に絶望が満ちあふれていても、世界をそれで覆い尽くすことは出来ない。
ひとかけらの希望があれば、

人はそれを足がかりにして世界すら覆すことが出来る。
諦めさえしなければ、戦える力は己の心底から沸いてくるのだと、
再び私に信じさせてくれた作品です。


次の作品はなんだろうと七尾先生を調べましたが、

完結したばかりなので、
休まれた方がいいのかなとは思いました(笑)。
すいません、とても感動して、

心から沸き立つ何かを再び手にすることができました。
恐らく言葉は届かないでしょうが、ありがとう。

ただ、ただ、ありがとうと伝えたい。
そう思わせてくれる漫画でした。
ヘルクの旅が困難にブチ当たったとしても、

必ず乗り越えられる力と勇気と、
そして仲間達に支えられていることを祈ります。