SRC感想


*[SRCシナリオ感想]:「飛べない鳥が望む空は」
製作者   :philoさん
HP: 伯陽堂 伯陽堂 http://homepage2.nifty.com/zhuang-zhou/

聖乙女会長・朱雀院飛鳥の叔父である、
朱雀院武蔵が登場します。
比較的遊び人風の彼ですが、
根本の所では兄であり飛鳥の父親たる
朱雀院大和を強く尊敬し、
その後背を支えようと心に固く決めた人物でもあります。
だが、運命の歯車は彼に補佐役をする事を許しませんでした。
飛鳥の両親の死。つまり、武蔵の兄、義理の姉の死。
それに対する武蔵の悲歎は泥を噛むより辛いことだったでしょう。

よく、権力争いというものがあり、弟が兄を殺し、
姉が妹を排除するような
骨肉の争いが起こったりすることもあります。
ただ、武蔵のように兄弟を敬愛してそれを支えよう、
自分はナンバー2でいいと思い定めた人物ほど、
ナンバー1に担ぎ出されてしまう事があります。
運命を司る神は、恐らく皮肉屋なのか、
己の分をわきまえた者に対して
神が思う(人がありがたいかは別)加護を与えるのか、
どちらなのかは分かりづらい所があります。
武蔵は幼い飛鳥を、敬愛する兄の子を守る為に、
朱雀院財閥の総帥を一時代行することになります。
この時点から完全に彼は己を殺しています。
それが今回のストーリーで
彼がSRC島を訪れた理由である、
飛鳥を狙う者を排除するためにやってきた事に繋がるのですが。

事件が解決した後、
己を犠牲にしようとした叔父に飛鳥は憤ります。
武蔵の人生の目的は、
兄を支える立場に立つことだったわけで、
それができなくなってしまった時点で、
彼は己を殺して生きる事にしました。
そこから数年、朱雀院武蔵という人は、
死人であったと言えるでしょう。
ただ、今回の事件で守られ続けていた飛鳥が、
叔父である自分の事を
本当に大切に思ってくれている事が分かり、
彼は朱雀院財閥の総帥代行という存在ではなく、
朱雀院武蔵として蘇生しました。
と、私は思っていたりします。

今回のストーリーは、武蔵の紹介を兼ねた導入から、
飛鳥の両親が如何にして亡くなったか、
その死が武蔵と飛鳥に与えた影響。
両親を失った飛鳥、兄を失った武蔵が、
もう一度大切なものを再確認する
ストーリーであったといえるでしょう。
ずっと守り続けているつもりだった相手が、
いつの間にか自分に手を差し伸べてくれるようになる瞬間は、
武蔵にとって忘れ得ぬ時だったのではないかと思います。