戦う司書と恋する爆弾戦う司書と雷の愚者

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

いや…恋する爆弾は、すげー設定です。私も人間を暗示で暗殺者にしたてたり、恋人の前で怪物に変えるような物語を読みましたけど、爆散するというあたりがかなり精神的にひびくものがあります。というか、爆弾だって言われた時点で、同じ境遇の人間が死んでいく過程で、コリオがどうなるかはわかるじゃないですか。恐らく、価値無き死を与えられるんだろう、と。でも、いや、だからこそ、彼の死に際しての演出はすばらしいものでした。
三流のシガル・クルケッサが古の魔刀と千年を見通せる予知能力者の力、そして人間爆弾を用いた周到な暗殺計画。それらは、一流にして最強を誇ったハミュッツ・メセタを倒すための条件を、ほぼ完璧揃えた作戦でした。しかし、そこまでしたシガルの計画が、彼自身肉と蔑んだ、コリオに阻まれてしまう。
人間爆弾は無意味な死を与えられてしまうわけで、予知能力者シロンもコリオも無残な死を遂げるのですが、陰惨な印象がなく、むしろすがすがしいのは、彼らが何かを成し遂げた意味を勝ち得たから…なのでしょうか?

雷の愚者は、恋する爆弾の直後に読んだ為、レーリアを憶えていたことが物語を盛り上げてくれました。爆弾の中で記憶や人間性を残した、哀れな人として描かれたレーリアでしたが、彼の絶望にあって人の尊厳を求めようとする貴い姿には、この巻の主人公である化け物候補生エンリケ同様、私も心動かされました。

この雷の愚者において、あまりにも格好良すぎるのは、ガンバンゼルによって集められた彼ら怪物候補たちでしょう。本食いのザトウの中において、彼らは溶かされ、咀嚼されながらも、否定された人間性を証明するかのように、世界との繋がりを取り戻し、笑うことができない仲間をフォローしていきます。自分たちはもはや助からない。でも、許せない男がいる、と。その意志…いや遺志だけでエンリケの背中を押す、その強さ。2度目読んだ時に、あの死と隣合わせでありながらも、友情を育んでいった島での暮らしは、強烈に胸に響いてきます。

それにしても、このシリーズ、私好みの悪人の国から来た、悪を為すための悪人が出てきていい感じです。ディモールト・グラツェって感じで(笑)。さらに言うと、肉という蔑まれる人権を剥奪された人々が登場しますが、彼ら力を持たないまったくの凡人が、超人や権力者に翻弄されるわけですが、その力を持った連中が敗北を喫するきっかけは、その凡人がつくるわけです。

しかけを知らないで読む1度目と、しかけを知ってからの2度目。久々に2度読むことで味わいがでてくる物語に出会えました。