カミヤドリ 5巻

カミヤドリ (5) (カドカワコミックスAエース)

カミヤドリ (5) (カドカワコミックスAエース)


面白かったのに…カミヤドリ。なんとなく、三部先生作品ということで気づくべきでしたが(笑)。噂では続編があるらしいのですが、ここで終わった理由がちょっとわかりづらいのですけどね。うーん。過去編もジラルドが右手にカミヤドリを宿して、超越的な身体能力を発揮する「右腕(ライトアームズ)」でありながら、「左利き(レフティ)」とあだ名されるに至った経緯が、きめ細やかに描かれており、伏線としてあったジラルドがピンチの際に頭をよぎる、忌まわしい過去の記憶。アリサがかつて口寄せ(トーカー)であった過去や、友の死によってカテドラルへ抱いた不信感など。これからドクター・ウルベルも交えて、上層部の動向とカミヤドリのさらなる秘奥に迫ると思った矢先のことですからねー(笑)。

ジラルドと初めて出会ったヴィヴィが、一緒に暮らし、姉のように慕っていたティーエを苦しみから解放した瞬間。頑迷な村人たちは、ヴィヴィをなじります。ジラルドの鋏銃(シザース)を横から奪い、狙いを定めた瞬間…ヴィヴィはティーエへの思いを、感謝を示すかのように瞳を閉じ、引き金を引きます。そのときのジラルドには、重すぎて引けなかった引き金を…。彼女はものすごくわかりづらいタイプで、一見、冷酷なようにみえますが、チェロ弾きの老人の話や、寺院でのラディを撃った話などを引き合いに出すまでもなく、ひそやかな優しさのようなものを持っています。だからこそ、妹やキャロスの死後、かつての明るさを失っていたジラルドを立ち直らせることに成功したわけです。

ひとつ気になるのはドクの消息でしょうか。彼の自室はあらされ、ドク自身の姿も煙のように消え去っています。進んだカミヤドリと人の共生の形である、ストークス理論を生み出した後は、用済みということでしょうか。しかし、本編のあの曲者っぷりをみるかぎり、何処かへ落ち延びて彼の目指す「すでに感染した人間を救う」方法をさらに研究しているのでしょうね。

続編…ないかなぁ(笑)。あるといいなぁ。