幻想水滸伝Ⅲ 11巻

幻想水滸伝3 11―運命の継承者 (MFコミックス)

幻想水滸伝3 11―運命の継承者 (MFコミックス)


かつてエメラルドドラゴンというPCゲームのノベライズにおいて、ヒロインをとんでもない所で殺してしまって、ストーリーを破綻させたということがありました。後を受けて続きを書かれた作家さんは、そのひどい展開を見ていて痛みが伝わってくるかのように、まとめあげたものです。幻想水滸伝Ⅲについて、私は何度も語ってきたのでゲームについてはもはや語る舌を持ちません。

正直、絶望したものです。私のHNである、リドリーというのは、幻想水滸伝Ⅱに登場するコボルド族の将軍にちなんだもので、それほどにこのシリーズを愛していたわけです。最初、幻想水滸伝Ⅲのコミックス化という話を聞いた時は、それほど期待していなかったのですが、巻を進めていく中、志水先生の幻想水滸伝の世界を愛した上での再構成、ストーリーの組み立てに正直、感動しました。当初7巻だったシリーズが10巻に伸び、さらに11巻までずれ込んだことが、この漫画版を幻想水滸伝を愛した人たちが支持してきた証であるといえるでしょう。

ルックの深い絶望。ゲームでは、ワイアットが同じ未来を見せられながら、そのあまりにも懐深い人間性ゆえに、恐れを克服した描写がありました。そのためか、ルックの絶望が矮小化されてしまった感がありましたが、文字だけで表現されていたルックの生い立ちからレックナートとの出会い、セラとの暮らし。このコミックスにおけるそれらの描写が、ルックの絶望に、ゲームではほとんど抱き得なかった「共感」を、この心貧しいリドリーにも湧き出させるほどに丁寧に描かれていました。

ゲームでは語られることがなかった、フッチの心情や、その後の展開も「これをゲームで表現してくれれば…」と思わせるものばかりで、それだけに、志水先生の幻想水滸伝世界への深い理解と、愛着を感じました。幻想水滸伝Ⅲのストーリーは、この漫画版だけを読めばいいという話もありますが、ゲームもプレイしていただいたほうが、よりこの漫画版のすばらしさがわかると思いますので、未プレイの方で「ゲーム原作の漫画で評判がいいのは珍しいから、読んでみよう」と思われた方は、ぜひ、ゲームをプレイして欲しいのですよね(ニヤリ)。

志水先生、ほんとうにお疲れ様でした。ゲーム原作のコミックス化は重圧がともなうわけで、そんな中このシリーズを最後まで書き上げられたその精神に、敬意を表します。そして、ありがとう。幻想水滸伝を愛した人々で、Ⅲとそれ以降の悪しき系譜で心を痛めた一人として、本当にありがとうございました。真・女神転生Ⅲを知人から借りるまで、ナムコクロスカプコンをプレイするまで、私はコンシューマーゲームを1年以上プレイしない時期がありました。それほど、Ⅲで受けた落胆、Ⅳで受けた絶望は深いものでした。でも、それをここまで、消化し、昇華して魅せてくださった先生に、感謝の言葉が尽きません。