勇んで購入にいったかいはありました。一巻に劣らぬ作りで、なかなかに楽しませてくれました。キャスターのセイバーへの歪んだ傾倒や、ランサーとセイバーの共闘。さらに、言峰綺礼の超人っぷりには、あんたサーヴァントとも互角に戦えるんじゃないのか(笑)?と思わせるほどでした。今回、私が被害者っぽいなーと思うのは、ロード・エルメロイです。一巻では小物っぽい姿を現さない戦いや、ライダーに「隠れてるような奴は勇者じゃない」と言われたり散々でしたが、水銀の魔術礼装がなかなか格好よかったので、時計塔の花形魔術師の面目躍如かと思われたら、衛宮切嗣にやられてしまって半身不随にされてしまうし。いや、水銀の魔術礼装が思いのほかすごかったので、確かに一流の魔術師だと思ったし、癖のない魔術師(コルネリウス・アルバのような)を見てみたいと思った私には、かなりうれしい存在でした。忌憚なく言ってしまいましょう。衛宮切嗣より、ロード・エルメロイの方が好きですよ、私(笑)。もっと言えば、衛宮切嗣嫌いです。まあ、きのこ氏の縛りもあってか、セイバーに話しかけられない辺りは仕方ないですが、なんかこう…漂う自己陶酔っぽさがどうにも気に入らないというか。もっと踏み込んで言えば、「俺は容赦ない。だから強い」って奴は碌な物じゃないということでしょうか(笑)。ま、彼についてはこのあたりにしておいて、サイドマテリアルなどに語られている感じでは、ライダー・セイバー・アーチャーの三者が最後に残ることは確定しています。ライダーとセイバーは痛み分けで、その後にライダーはアーチャーに倒され、セイバーとアーチャーの決戦のさなか衛宮切嗣が聖杯の破壊を命じる…はずですので。ランサー・キャスター・バーサーカーは、次巻には退場してしまう運命にあるのでしょう。キャスターはなんとなく展開読める気もするのですが、ランサーやバーサーカーはどうなるのか気にかかります。
しかし、この2巻の最大の山場というか見せ場は、酒盛りの時のライダーの宝具王の軍勢がすばらしかった。なんというか、悲しい場面でも何か心に訴えかけるような場面でもないのに、自然と涙がでてしまうというか(笑)。我欲を求めて思うがまま征服に勤しんだイスカンダル。自身を捨てて国の為に尽くしたアルトリア。であるというのに、死した後も彼に忠義を誓い、その思いが宝具にまで昇華された王の軍勢。ここで、アルトリアに「円卓の騎士」という宝具があれば、彼女は救われたのかもしれないけれど…うーむ…。しかし、セイバーは第4回の聖杯戦争でここまで突っ込んだ話をしておいても、なお、やはり望みを捨て切れなかったのですねー。逆に同じ王に否定されたから、躍起になってしまった部分もあるかもしれません。まあ、彼女の救済というか想いの洗浄は衛宮士郎がすることではあるのですが。しかしこの小説、すでにライダー・イスカンダルが主人公なんですよね(笑)。極論を言ってしまえば、「ぼくの考えたサーヴァントすごい」を見せられているわけなのですが、その見せる側の準備と力量によっては、こうも上手く料理できるものなのだとちょっと感心しました。