戦う司書と絶望の魔王 BOOK9 (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と絶望の魔王 BOOK9 (集英社スーパーダッシュ文庫)

評価:10/10



こんなに速く評価10出してしまうなんて(笑)。
でも、仕方がなかったんです。
正直、0を二つくらい足したい気分というか。


前の巻を読んだときに、ルルタの能力の揃いっぷりをみるにつけ、
彼は一人だけで戦うRPGの主人公のようだという印象を受けたわけです。
どちらかというと、アクションRPGといった方が分かりやすいかもしれない。
一人しかいないから、最初は剣を振るだけの主人公が、
いずれ魔法を操り、空を飛び、大気を揺るがすような力を持つ。
ルルタをみたとき、それを思い出したというか。


ハミュッツから語られた世界を恐怖で支配する魔王。
それが空しくなるような、人間としての、
一人の少年としてのルルタが描かれていました。
そして、彼の誰にも理解されない苦悩を癒したニーニウ。
後から判明することだが、ルルタが世界を表面上救う立場だったとしたら、
ニーニウは直接関係なさそうな事で、それをルルタ以上に行ってきたという、
二人の対比の妙が印象的でした。


けれどそのニーニウの身に降りかかる、人の悪意。
そして、世界を救ったはずのルルタの慟哭。
あれほどみなを救った彼女は、救われなければならない瞬間に救われず、
あれほど彼女を愛したルルタは、その彼女を……。
そこまで読んだ瞬間、私の精神はウィンケニーのように、
砂になって崩れ落ちました(笑)。


題名の絶望の魔王。
なんて、空しい言葉なんだろうか。
彼は絶望していなかった。むしろ、最後の瞬間まで彼女を救おうとしていた。
けれど、それは決して叶わないことだったのか。
絶望した彼女を救おうと、希望を持って二千年を生きてきた彼は、
絶望に塗り込められるしかなかったのか?


この悲しい二人の物語に、どんな終止符が打たれるのかとても気に掛かります。
ハミュッツの最後の力が成就するより、
コリオの何かが二人に作用する(救うとはとても書けない)方が、
よりよいような気がするけれど、途中経過の予想は当たっても、
私が考えた結末の予想が、当たった試しがないというか(笑)。


次巻が最終巻だそうですが、楽しみにしています。
いや、楽しみというか、祈りたいというか。
何に何故、祈るのかは……上手く表現できないけれども。