戦う司書と世界の力 BOOK10 (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と世界の力 BOOK10 (集英社スーパーダッシュ文庫)



評価 10/10




どんな鬱展開が待ち構えているんだろうと、覚悟していました。
ニーニウの絶望と、それを癒すために時を費やし続け、
その上で不可能であると悟ったルルタ・クーザンクーナの1929年分の諦め。
あまりにも深すぎるそれを癒すことは、まさしく神ですら不可能な事である、と。
だから、読んだらびっくりしました(笑)。いい意味で予想を覆されました。
こういう感じで、予想を裏切られるのは、本当に嬉しいです。
ありがとうと言いたい。


前巻でハミュッツがルルタに喜んで殺されたのも、最後の罠を発動させる為だったのですが、
その為に彼女が歪んだ精神に改造された過程が悲しすぎます。
そんな精神の中でも、武装司書が意味のないものだと、
謳っている正義の名にふさわしい存在ではないとしても、彼女は仲間を愛していた。
ハミュッツのその述懐が、痛々しく思えました。
死した際に発動する彼女の力で、ルルタの仮想臓腑へ降り立ち、
死を賭けた最後の罠は、ルルタを絡め取ります。
マキアはチャコリーとハミュッツという二つの手段で、
ルルタを殺す手段を考えました。
双方に言えることは、人であるままでルルタを凌駕することは不可能であるならば、
人であることを捨てさせるという非人道的なやり方でした。
そして、それは効果的な方法で、ルルタを圧倒します。
しかし、圧倒されたルルタは、最後の切り札
ニーニウへの全魔法権利の譲渡を行ってしまい……。



もう、この辺りからのピンチとそれの逆転、
絶望と希望の入り乱れる様が、もう堪らないです。
全ての力を失いながら、ニーニウの心を救う為に、コリオの短剣を持って、
圧倒的な終末の獣に立ち向かう、魔王ではなく、救世主でもない、
人間ルルタ・クーザンクーナ。
ラスコール・オセロが、追憶の戦器となった過去と、彼の最後の行動。
涙なき結末の力から、ただ一人を解き放つ選択。
そして、その選択で目覚めたミレポックの行動と、
かつてハミュッツが語ったミレポックの重要性に関する言葉。
ミレポックに託されたチャコリーの遺産と、そしてそれが導きだす答えが……。



スーパー武装司書大戦ッ!!



マットアラストが傷ついたミレポックを救い、
ボンボ、キャサリロがそれを援護し、ユキゾナが皆を率いて戦います。
もう、この辺りからボロボロ泣きながら、鼻水垂らしながら読んでました。
仮想臓腑の中はノロティがルルタを救い、ビザクが来るのはいいけど、上裸パンツのフィーキーが(笑)。
死した武装司書、そして歴代バンドーラ図書館代行がやってきて……
傷ついたハミュッツをヴォルケンが救い、
歴代最強の超時空武装司書イレイア☆キティちゃん(若いバージョン)降臨(笑)。
そして、無限の蟻使い、残念なイケメン、モッカニア・フルールまで……。


堪えられない展開です。とても美しいモノを見せて貰いました。
ニーニウとルルタの思いも、新たな絆で昇華されていきましたし。
上手くいい表せないのですが、実際に戦った武装司書達、
ミレポックの思考共有に呼応して、祈りを捧げた人達。
人間はつまづき、絶望するけれど、手を携え、協力し、
挫けた膝を立ち上がらせることができる。
そして響く、ニーニウの唄……。


武装司書達の想いが、原初の誓いが、
嘘だと皮肉られていた宣誓の言葉を、真実に換えたわけで。
勇気を貰いました。
やっぱり、私は、笑顔で終わる結末が好きだ。
それをもう一度気づかせてくれて、ありがとうございました。


前嶋先生の次回作も楽しみにしています。
……本当に楽しかった。本当に、ありがとうと言いたいです。
また、戦う司書と恋する爆弾から読み直したくなってきました……。