鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)


評価 10/10



2001年から、約9年の長きに渡って連載されてきた鋼の錬金術師も、
これで完結となりました。


今でこそ大ファンですが、私の鋼の錬金術師との最初の出会いは、
あまり芳しいモノではありませんでした。
ニーナの話から読み始めたからです。「まったく、また鬱ものか……」と思ったのですが、
その後のスカーとの戦いで、アームストロング少佐が戦っている姿を見て、
「ほう……今時、まっすぐなマッチョを……」と思い、最初から読んでみることに。
それですっかりはまってしまって、読み続けることになりました。
1巻の列車事件の頃から読んでいれば、もうちょっと早く読み進められたと思うんですがね(笑)。


最終巻のバトルは圧巻でした。
もちろん、連載中もずっと読んでいたのですが、私が鋼の錬金術師を好きな理由の一つが、
遺憾なく発揮されていて、読んでいてテンションがあがりまくりでしたね。
その理由は、「漫画において主人公のクラス(職業)以外は活躍できない」
っていうジンクスが、このシリーズでは無い事です。
もっと言うと、普通の人が、ちゃんとラストバトルでも戦っているという、その喜びと言いますか。
例えば、「○○の魔術師」というシリーズがあったとします。
その魔術師以外の人は、戦闘で活躍できなかったりします。
活躍しても、敵の強さを見せるための演出装置として使われてしまうと言うか。
鋼の錬金術師では、普通の人(戦闘訓練受けていますが)がちゃんとラストまで戦っているので、
──まあ、逆に錬金術師よりも活躍している人がいますけど(笑)──
そういう点で非常に嬉しかったですね。みんなで戦っている姿が写るというか。


ラストバトルは私が語るまでもないのですが、取りあえず一つだけ。
お父様の敗因について。
真理の扉の中で、お父様は真理に出会い、次のような言葉を投げかけられます。


「盗んだ高級品を身につけて、自分が偉くなったつもりか?」


そう。お父様の力というのは、自分自身で錬磨し、経験を積んで、
修練しながら極めていった身についた技能ではありません。
単純に強大な賢者の石というエネルギー体を、クセルクセスの王を騙し、
クセルクセス王国の人々を蹂躙し、手に入れた力です。
実は、手に入れるために己自身は、何もしていません。
魔法陣を印し、儀式を行ったのも別の人間。
人を動かしはしましたが、己は手を汚しすらしていない。
彼らが絞った果実の汁だけ飲み干すような真似を、彼はしているわけです。
まあ、フラスコから出られないって制限があるわけですが(笑)。
そのやり方は、詐欺師としては上手い方法でしょう。
でも、それは、土壇場で力にはなりえない。
本当に、二本の足で立って、結ばれた絆を持ち、様々な苦悩を経て、
眼前に立った 「人間」 に、通用するわけがない。
盗んだ人間は、身につけた人間に、絶対敵わないわけです。


なんか、長々書きましたが、是非読んで下さい。
私などが何か書くより、読んで、自分で得て下さい。
損はさせないぜ、と言っておきます。


最後に、荒川先生お疲れ様でした、と言いたいです。
とても、良いモノを読ませて頂きました。
どれほどのメッセージをくみ取らせて頂いたかわかりませんが、
私も、二本の足で歩いていきます。通風の痛みと供に。
それから、12巻のカバーの言葉は、私の指標として守り続けて行きたいと思います。
長い間、お疲れ様でした。そして、ありがとう。