シナリオ名 :「始まりの二人 〜姫士組誕生秘話〜」(前後編完結)
製作者   :philoさん
HP: 伯陽堂 http://homepage2.nifty.com/zhuang-zhou/




姫士組創設のメンバーの話は、大分前に設定だけ聞いていましたが、
非常に興味深いと思いつつ、記憶の片隅にありました。
それがこうして形になった事は、とても嬉しいことです。


守泉始信(かみいずみ・しのぶ)、姫塚士(ひめづか・つかさ)。
姫士組の祖であり、礎となる部分を作り上げた、まさしく始まりの二人。
不良として日々、悪党を蹴散らしつつ、くすぶり続ける始信。
そんな始信に可能性を見いだし、未来へ視点を向けているのに、
始信にはその考えをやんわり拒絶されてしまう士。
二人の毎日は、そのまま流れていくように見えましたが、
そこにもう一人のエッセンスが現れてきます。


始信を慕う八凪厳江(やなぎ・よしえ)が勝負を挑み、
叩きのめされるのですが、かえって始信を慕うようになります。
そして、その当時の総代騎士・虎金雅弘も、
始信に対してただの不良とは一線を画した人物として、評価しています。
ただ、彼に忠実な騎士である、漆原明雄は懐疑的な目で始信を見てはいますが。
役者が揃い、舞台が動き出します。
ある意味、最初の騎士団・姫士組共闘であると言えるでしょう。
ただ、それが姫士組成立前に、供に肩を並べて戦う辺りに奇妙な因果を感じます。
拙作で、騎士団と姫士組が和解し、共闘の道を進むことになりますが、
それはある意味最初から定められていた事なのかもしれないと、感動を覚えました。


ただ、それもつかの間。
樹海が発生し、R女学園が飲み込まれ、士が帰らぬ人となります。
もう、手遅れのR女学園を放置せざるを得ない、
その虎金の痛みを思うと、気が遠くなりそうですが……。
そして、友を救えない無念と、手をこまねいている騎士団への怒りに満ちた始信。
ここで後編に続きますが、詳細には触れないように、
私の感想を書いていくことにします。


第一に、虎金が非常に大人な思考であると思いました。
彼も組織のTOPとして、R女学園を見捨てて避難誘導を続けなければいけなかったのは、
本当に仕方なかった事なのですが、始信の怒りを真っ向から受け止めて、
冷たい理ではなく、優しい理で諭す姿は、実に大物だと思いました。
そして、虎金に受け止めて貰い、士の名前から姫士組を作り上げる始信。
誰よりも強く、強靱であった彼女も、親友の死には動揺を隠せませんでした。
それを乗り越えたとき、始信の器が形作られたように思えます。



「始信には、人の上に立つ器があると思うわよ」



士が始信に語っていた言葉ですが、もう、それを聞くことはできない。
だが、哀しみにうちひしがれていていいのか? よくはないからこそ、亡き人の志を継ごう、と。
士が後で語っているように(ここは本編をプレイして驚いて下さい)、
彼女の死によって、姫士組が産まれるということ。死から産まれる何か。
そこから何を受け継ぐのか。
何かが産まれるって言う事はそういうことかと、そこまで思考を巡らせてしまいました。
そして、二代目の姫長になる、八凪は非常に優れた人物だと感じました。
まさしく、出来たばかりの組織を、大きくしていく調整型の人間だと。


言葉にするのが難しいのですが、私の印象は……。
善い意志の物語であったと思います。
悲しい事もありましたし、すれ違いや傷つけ合う事もありましたが、
最後の最後で、善い方向で個人の遺志を、力強い意志が受け継ぎ、
それが今へと連なっていく様が描かれていたことに、深い感動を覚えました。


で、まあ、最後のサプライズには驚きました(笑)。
実に楽しませていただきました。他のシナリオ作成も頑張ってください。