魔法少女プリティ☆ベル 7 (BLADE COMICS)

魔法少女プリティ☆ベル 7 (BLADE COMICS)


9/10



バラバラに動いているようでありながら、
幾つかの事件が同一の目的の為の布石であるという状況。
相手が完全に定石を放棄している為に、
まともに対局しては負けてしまうインチキな対局。
7巻で起こった厚志さん達への挑発とも思えるルラの攻撃、
南軍への急襲、それらを囮にした本命と推測された南極への攻撃。
最後の本命?っぽい攻撃があったことで、
一連の行動に意味があるって思わされるところが恐ろしいです。
意味は確かにありましたが、ルラは「ドラゴン」と言っていましたが、
彼が恐れそれらとの対局を狂喜して望む魔王軍と、
単体で同一規模の戦力を持つプリティ・ベルに釘を刺すことではなかったのでしょうか。
一番最初のルラの計画で、最後の最後でそれを覆したのはプリティ・ベルでした。
そして、以後の世界の危機においても、
──恐らくはルラが大なり小なり関わってたのでしょうが──
プリティ・ベルは重要な因子でした。
さきほども言ったようにそれに対して釘を刺すことと、
あとは今代のプリティ・ベルの能力調査もあったのでしょう。
まあ、酷い目に会いましたが(笑)。


今回、ワームとジロウさんについての感想を書いていきたいと思います。
ワームは、あの海魔の社会で育った事を考えれば、
非常に精神的に穏健で、民主的なものの価値を知っていて憧れている。
ある種の善良な人格を持った人であると言えるでしょう。
ただ、ルラが指摘しているように、民主化によってもたらされる理想にだけ囚われていて、
そのプロセスにある国民への教育や制度の充実など、
時間がかかり困難で、しかも地味な施策を進めていく事をしていません。
まあ、海魔を解放した?ルラが、それをやらせていないのかもしれませんが、
国民は無茶してるようですし、議会も話会いにすらなってません。
それは、当然です。そういう教育受けてないんですし。
彼の悲劇は、ある程度有能で、理想を抱いていたことなんでしょうね。
そうでなかったら、目を付けられなかったはずですから。


で、ジロウさんについてですが、リリィとの話会いについて、
それを癒しだと言っていた事から分かるように、
1人殺して100人助かるなら、1人を抹殺する方を選ぶ、
現実的な平和主義者という側面を持ちながら、
普段の彼はあきれるほどに気が長い、教育者的な理想主義者であることが垣間見えます。
リリィとの議論の後、訪れたイタカに呆れられながら、
「5年か10年……まぁ、お互い居るのが当たり前になるくらいですかね……」
と語ったその言葉にも、教育者的な側面を見ることができると思います。
思えば、初代プリティ・ベルの美雪と出会ったときもそうですし、
同盟を組む際に、厚志さんやエリちゃんと出会った時も、
平和というものの本質や、自身の理念を語って、
エリちゃん達に畏敬の念を与えてはいますが、
そんな事を懇切丁寧に話してあげる必要はないわけです。
話し合える時は、驚くほど気長に相手につきあうのが、
ジロウさんの本質なんではないでしょうか。
そして、私はそこが弱点なのではないかと思います。
今回、リリィ殺害の嫌疑がかけられてしまいましたが、
それの目的は綾香ちゃんの殺意をジロウさんに向けるためでしょう。
ジロウさんの場合、そこが突かれそうで怖いです。


積み上げられていく恐怖というものがあります。
凶悪な存在、醜悪な化け物。そういったものが血飛沫をまき散らしながら、
人間をミンチにしつつ迫ってくるのも、夜中貞子たんがベランダで懸垂しているのも、
確かに恐ろしいものでしょう。
ですが、よく分からない事態が推移していく中、
それがよく分からないまま、巨大な分厚い壁となって、
いつのまにか、身動きできなくなってしまう。
その閉塞的な状況を思うと、嘔吐感すら覚えるほどの恐怖を覚えます。
私は子供の頃、海で溺れたので、いまでも海が怖いです。
プールなら3kmくらい泳げるのですが、あの深い青のどこまで続くのか分からない海の底を、
薄れる意識で覗いた時の恐怖は生涯忘れません。
そして、今回の7巻を読んだ時、最後のページでそれと同質の恐怖を味わいました。
形がはっきりしている分、よっぽど質が悪いですが(笑)。



……ジロウさんがレバー入れ大ピンチなんですが、これがどう転ぶのか気になります。
正直、この人が消えると現在の4大魔王軍同盟自体が、
霧散してしまう可能性すらあると思っているのですが。
最高指導者なのに、フットワーク軽いですし(笑)。