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9/10



件名の台詞が非常に衝撃的でした。
エグゼビア教授のかかげた理想。彼自身は折れることなく掲げ続けたのですが、
その理想を継承するべき一番の弟子であるスコット・サマーズ────サイクロップスが折れた。
90年代のX−MENを読んできた私としては、頭を殴られたくらいの衝撃を受けました。
でも、確かにそうだよなぁとは思います。
ミュータントと人間の平和的な共存。
それを掲げ続けたX−MENと教授達が、どんな扱いを受けてきたのか。
オンスロートでは、オンスロートを屠ったものの、
ヒーロー達を見殺しにしたと叩かれ、その後もミュータントを殺せ、
ミュータントを殺せの大合唱。
この環境で、平和的共存を掲げ続ける事は、難しいでしょう。
とうとう、理想が破綻するときがきた。夢が崩れ去る日が来てしまった。
頭の中では私も無理だと思っていたのですが、理想が、それがどんな非現実的なものでも、
その為に流された血の量、努力の量、命の量、涙の量を考えると、
複雑な気持ちにならざるをえませんでした。


私がX−MENを読み始めた90年代は、アニメも放送されていて、
アベンジャーズが人気の低迷からヒーローズ・リボーンというリニューアルプロジェクトによって、
キャラクターオリジンやデザインが一新されるという事まで起きていて、
現在とはまったく異なる状況に時の流れを感じてしまいます。
解説の冊子にかかれていた、

いわゆる投げっぱなしな伏線の多さに驚かれるかもしれないが、
こういった次に繋げる展開こそが、X−MENをトップタイトルに押し上げた要員でもある。


という言葉ですが、ああ、確かにそうだなーと思いつつも、
それが現状の邦訳でのX−MEN冷遇を物語っているとも感じました。
キャップやアイアンマン、アベンジャーズなどはその一シリーズで、
ある程度の引きや伏線はあるにしろ、そのイベントだけで話が完結してるわけです。
X−MENは、未来へ行ったレイラの今後、ビショップの処遇。
別の未来へ帰還したケーブルとメサイア、ローグとガンビットの今後。
勿論、犠牲を出したX−マンションの再建などと、
現在進行形のMーデイの影響、狂信的ミュータント虐殺組織ピュリファイアーズ。
解決するべき問題が山積みで、一応、メサイアを廻る話は片が付いたものの、
ストーリーラインが終わった気がしない。
To be continued状態なわけです。
小学館プロダクションから黄色いX−MENの本が刊行されていた頃は、
ちょくちょく続刊が刊行される中、X−MENワールドの広がりと、
明かされていくキャラクターの生い立ち、伏線、新たな敵、
明かされた正体などなどで楽しめて行けたのです。


翻って現状のちょこちょこっと刊行されてる状況だと、
どうにも消化不良感が大きかったり、訳分からない感が大きくて、
それだったら一個のストーリーで、メッセージ性もあって楽しめる、
アベンジャーズ関連タイトルの方が単品だと面白いんですよね。
キャプテン・アメリカやアイアンマンは、120分映画だとするなら、
X−MENは13話完結のTVドラマみたいなもので、
キャップや社長の話は1冊で(120分映画)を見るだけで大体話は分かるし、
次まで幾つもの伏線が残されることもないわけです。
で、X−MENは、同じ1冊だけ刊行されると、
例えにあげたような13話ドラマの1話だけ見せられても、
面白くない訳なんですよ。
X−MENタイトルで読者から支持を得るには、
シリーズをまるごと邦訳する英断が必要だと思うのですが、
その辺りどうなんでしょう? 邦訳してくれれば買いますよ、マジで(笑)。
アポカリプス・トゥエルブの辺りとか読みたいですし。


あと、翻訳される側の都合と展望もあると思うのですが、
メサイア・コンプレックスは面白かったのでいいんですが、
正味な話、最近のX−MENタイトルってつまらないんですよ。
何故かって、ライターの腕が落ちてる事もありますけど、
知ってて前提の話を私達日本の読者が知らないからです。
私は情報を集めてるんで知ってるんですが、やっぱり実際読みたいですし。
だから、ゼロ・トレランス以降のメジャーシリーズを、
幾つか邦訳して貰えると助かります。
でたら、買いますよ。メサイア・コンプレックスみたいな形式でもいいです。