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積極的な悪人がいるわけでもなく、かといって積極的な善人が助けにくるわけでもない。
灰色の普通の人が普通に困っている人を見捨て、
虐げられている人は更に弱い人を虐げ、そして淀みと澱が貯まっていく負の袋小路。
この地球上の至る所に、ごくごくありふれたように存在する地獄。
閉じた世界でありながら、特別ではなくて普通に隣接する地獄。
これは正直、人間が人間で在り続ける限り、決して無くなることがない業であり、
これを解消できたとしたら、もう、人間以外のなにかになっているんじゃないかと思います。
私はおっさんなので、ある程度の解答がありますが、
それを人に対して押しつけたり、教授するほど確たる理論でもないので黙しますが、
生きて考えた時間が短いジークにとっては途方もなく巨大な毒の沼であったことでしょう。
倒すべき魔王も、悪政を敷く王も、虐げる大商人がいるわけではない。
ただ、その問題に対する英霊達の解答が、非常に興味深くて、
彼らの内面を掘り下げていくのに役に立ったと思っています。


あと、件名にあるすでに助からない悪霊の子供達を浄化する、
ジャンヌのくだりが非常に燃えました。
前々から薄々思ってたんですが、この人は型月世界でも屈指のメンタルの強さを誇っていると思います。
もう助からないと嘆くだけではなく、助からないのだから切り捨てると冷酷になるだけでもなく、
心底では涙を流しながら、悪霊の子供達が未練を残さぬよう、
鉄面皮を貫き、彼ら無垢なる魂を天へ還す。
私は自分の信念を貫く人が大好きなので、
青ヒゲの旦那と一緒にジャンヌ=ダルクファンクラブに入会してもいいくらいの気持ちになっています(笑)。
翻って、残念なのが、アタランテですか。
ギリシャの英霊で、ケイローン先生よりもさらに正純の弓の英霊なので、
活躍を期待したのですが、なにやら運の無さそうな役割が回って来ました( ´・ω・`)。
ただ、東出先生って、型月のセオリーをけっこう外してくるのです。
例えば、ゴルドさんなんかは、普通の型月だったら速攻で死んでる人です。
こないだ、萌えキャラに転生しましたが。今回も萌えました(笑)。
というわけで、このままヤンデレとして終わるのか、また別の道行きがあるのか。
その当たりを期待しています。


実の所、4巻を読み始めた時は、失望の方が大きかったのです、実の所。
こんな日常話で尺をとっていいのかと。
全部読み終えて納得しました。これは必要な日常だった。
そして、最後の日常風景であり、マスターたちと英霊達の、
最後の穏やかな暮らしの姿であったわけです。
最終決戦前に必要な儀式でした。
東出先生恐るべし。


5巻で完結予定のようですが、実の所、5巻上中下とか完結編とかになっても、
一向に構わない人間なので、後は好きにやってください( ´ー`)y-~~