辺境の老騎士2 新生の森

辺境の老騎士2 新生の森


9/10


作中でも屈指の人気キャラ、ドリアテッサが登場します。
というか、メインの女性キャラこの人くらいなんですが(笑)。
ドリアテッサの話が中心ですが、実は彼女の果たすべき使命は終わっておらず、
次の辺境競武会で色々片が付くはずです。
この話も非常に面白く、私も大好きな下りなのですが、
恐らくは好きな人が多く感想も沢山あるかなーと思い、
後半の亜人ゲルカストのストーリーについて語りたいと思います。


この世界では、人間は多数いますが、大障壁に守られ、
強力な魔獣や、人間と比較にならない亜人がいて、
人間の優位は数だけという感じになっています。
亜人ゲルカストは、一人で騎士五人の強さをはっきする、
非常に強力な種族で、実は一巻でバルドはこの種族の勇者の知己を得ています。


その勇者エングダルは、ゲルカスト氏族の聖なる地を意図せずして汚した一人の騎士を、
必ず戻るという約束の下、放免してしまいます。
結局、その騎士は戻らず、ゲルカストの氏族を追放され、
集団で生きる彼らにとっては辛い、単身で生きるという罰を二十数年受けることとなります。
そのエングダルが約束をした騎士の息子である騎士マイタルプと邂逅し、
エングダルとの約束を守ろうとした父を、一族郎党で押しとどめ、
約束を守れぬと無念の内に自死した事を告げます。
それを聞いたエングダルは、こう彼に声をかけました。

「お前の父は、名誉ある戦士だ」
その言葉を聞いたマイタルプは、泣いた。立ったまま、男泣きに泣いた。


一行付け加えるなら、
読者(私)も泣いた。座ったまま、男泣きに泣いた。
って感じでしょうか。
詳しい解説は省きます。無粋なので。
昨今、悲惨な事件やできごと、人心が荒廃している様を見ると、
人間の矜持について考えさせられることが多々あります。
もう、そういう精神は物語の中にだけあるのかもしれません。
でも、物語の中で生かしていくことが、それを読んだ人たちの心に、
なんらかの影響を与えてくれることを、私は信じています。
だから、無駄ではない、と。


老騎士は既に小説家になろうのHPでは完結した話なので、
結末を私は知っているのですが、それを知った上でいまの時点でのジュルチャガの言動を見ていると、
ああ……(';ω;`)
となることが多くて、彼の心の内を慮ると、ああ、そうだよなぁ、そうだよなぁと思ってしまって、
それを暖かく受け入れてくれていたバルド達の懐の深さにまた、泣けます。


今回、初回特典の冊子、トリーシャの歌はこの短い中に、
素晴らしく美しく儚い物語を詰め込んでいます。
支援BISさん特有というか、簡単にいうとフラグ立ちすぎてるんですが、
そのフラグがまるで精緻で暖かい銀細工のようで、
読んで溜息をつくばかりでした。