シージ (MARVEL)

シージ (MARVEL)


9/10


変身能力を持ったスクラル人による地球への大規模な侵略、シークレット・インベージョン。
その事件の際、功績をあげて一躍スターダムにのし上がったグリーンゴブリンこと、ノーマン・オズボーン。
重傷のS.H.I.E.L.D.総司令であったトニー・スタークはその任を解かれ、
オズボーンがS.H.I.E.L.D.とアベンジャーズを率いることになります。
そのオズボーンが作り上げた、コスチュームだけアベンジャーズで、
中身は犯罪者・ヴィラン達で構成されたダークアベンジャーズ。
ここ数年の邦訳の流れが、そのダークアベンジャーズに対抗するために集った、
アベンジャーズやその他のヒーロー達で作られたニューアベンジャーズの、
レジスタンス活動的な戦いの連続でした。


今回、このシージにおいて、久しぶりに揃ったビッグスリー
アスガルドアメリカ大陸上空への突然の現出という、
頭おかしいだろうというイベントからスタートします。
よく、ダークアベンジャーズが去って、溜飲が下がるといいますが、
実の所、キャップ達の復帰は嬉しいのですが、オズボーンは好きだったのでちょっと残念です(笑)。
非道というか冷酷な面はありましたが、彼なりにその立場を守るため、
ある程度悪ときっちり戦っている所もあったわけですし。
このシリーズのラストでショックだったのが、
ダークアベンジャーズ唯一の良心。一児のお父さん、アレス。
彼の死が、本当ショックでかかったです。
発注したライターが、「確実に死んだのが分かるように」という死に様を注文したら、
あのセントリーによる真っ二つがあったので、本人もびびったらしいです。
なにはともあれ、キャップ・社長・ソーのビッグスリーの復帰は、
やはりファンとしては心から嬉しいので、
今後の戦いも見守っていきたいです。



今回、太陽に放り込まれて完全に退場することになったセントリー。
正直な所、私は彼が大嫌いで、死んでくれてすっきりしています。
ただ、そんな嫌いな私でも、今回の扱いについては、
疑問を禁じ得ない部分もあるのです。
彼の作中の扱いは、長年忘れ去られていたヒーローという事で、
面白い登場の仕方であると感心したものです。
ボイドという自信の悪心による、邪悪な行いに怯える、
太陽百万の力を持ったヒーロー。
つまり、不安定だけども、止めようもない超パワーで戦うヒーローという、
かなり危険だけれどライターとしてはいい道具である登場人物ができたわけです。
なぜかというと、ハルクというヒーローがいます。
あの緑色の巨人で、制御不能。味方だったのがいきなり味方を殴り飛ばしたり、
有利な展開でいきなり発狂して敵に回る始末に負えない人でした。
でしたというのは、ハルク・ウォーというイベントで封印されてしまって、
どうにも解放の目処が立たなかったわけです。
そこで、セントリーが来ました。
彼は展開の都合によって、ヴォイドに精神を揺さぶられ、
勝てそうな所でいきなり暴れ出してヴィランを逃がしたり、
味方をいきなり殺したりする危険な人物として、重宝されました。
重宝とはどういうことかというと、ライターとしてはセントリーが暴れたから、
事態が更に混乱したとすれば、みんな納得してくれるからです。
編集部は便利なセントリーを便利に使いすぎて、
彼は読者からの憎しみを集めて行ったのではないでしょうか。
私も正直嫌いでしたし。
でも、流石に今回の処分はなかったんじゃあないでしょうか。
大嫌いな彼でしたが、キャラクターの扱いについて、
多くの事を学ばせて貰いました。


マイケル・ムーアの言葉を借りれば、ヒーローとは、
「ヒーローってのはスーパーパワーがあるとか、コスチュームを着てるって事じゃない。
 自らの意思でもって世界を良くしようと戦う人々の事を言うんだ 」
であり、私もそうだと思っています。
セントリーはヒーローであったのか?
私は、いいえと答えます。
では、なんであったのかと問われれば、
私の答えは被害者であったと。ヒーローが救うべき被害者であったと。
セントリーを埋葬するソーの悲しそうな顔が、私の頭には鮮明に残っています。