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私が思う、せがわ先生の漫画の魅力というのは、こうかなと勝手に思っています。
原作が持つ良さを引き出しつつ、原作の山田風太郎先生のファンである、
せがわ先生自身がこういう部分を描きたい、付け足したい、演出してみたいという事が、
プロとしての力量で形作られ、きっちり物語に付加されていることだと思います。


今回、田宮坊太郎との戦いを皮切りに、魔界衆と十兵衛の死闘は、
多くの人間を巻き込みながら壮絶に進んで行くことになります。
柳生に師事した田宮坊太郎と、十兵衛が江戸柳生屋敷で出会い、
稽古をつけてもらい、初々しく、爽やかに礼をいう田宮棒太郎。
彼はその時、十兵衛を、「十兵衛先生」と呼んでいます。
そして、魔界衆となった坊太郎は、十兵衛を呼び捨てにするわけです。
魔人と化した坊太郎は、かつての記憶に心揺り動かされる事なく、
おひろを人質にとり、無惨にも柳生十人衆が一人、主税を斬り殺します。
そこに、道場で爽やかな笑顔を浮かべていた、好青年の剣士の姿はなく、
ただただ、残忍な魔人の姿があるのみです。
その坊太郎が最期の瞬間、十兵衛に真っ二つにされるのですが、
右半身は恨み言をいいつのる魔人の顔。
左半身は先生と呼びかけるかつての面影。
この演出にぞくりと来ました。




せがわまさき、やはりやりおる(笑)。