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ファランギース様の格好って、このカッパノベル版の表紙を参考にしたって感じですかね。
荒川先生、グッジョヴ(笑)。


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魔界転生もそうですが、荒川先生のアルスラーン戦記でもいえることは、
原作に対する理解、そしてそれを咀嚼した上で原作そのままではない、
荒川アルスラーンとでもいうものが産み出されている辺りが、非常に楽しくてなりません。
今回の場合、削除してもいいようなカーラーンがルシタニア軍で、
立場が苦しいシーンを描いたり、死に瀕した彼が、
周囲を観察することで自身の敗因を正確に分析する辺りで、
カーラーンをただの悪役として終わらせない描き方が、好感が持てます。


私は角川の映画が好きでした。
いまでも、主役級のキャラのデザインは、あちらの方がしっくりくる人がいます。
ただ、荒川先生のアルスラーンのキャラデザは、非常に好ましいものであると感じています。
なにより、おっさんが多いこの作品で、これだけ多様なおっさんを描いてくれる方は、
そうそういないわけで、楽しく拝見しております。
角川映画では顔も醜く、行動も小物で、ひっどい悪いだけのただの悪い悪役だったカーラーン
原作を読んだ時は、そういう印象ではなかったので、残念に思いました。
それから、20数年あまり。
あの時感じた残念な思いは、荒川先生のカーラーンによって拭われました。
いい、とてもいい死に様でした。
カーラーンがこれだけ素晴らしかったので、ザンデの描写も楽しみにしております。


今回、丁度原作の一巻が終わるくらいの内容で、
また、一巻から読み直して、そのまとまりの良さに感服しました。
ただ、対談で荒川先生がおっしゃっていた、「どの部分を削るのか迷う」辺りが、
強く出たかなと、私は感じました。
小説の文章をそのまま漫画に落とし込むと、さすがに無理な部分があるので、
絵による動きなどでそれを代替したり、別の表現に変えたりするのがコミカライズの面白い所で、
概ね納得のいく想像以上の展開だったのですが、一点だけ私の好きな台詞が削られていて残念でした。
地下室で魔道士と会見した際、
「一対一なら戦ってもよいが、一対二なら避けることじゃ、おぬしの剣技をもってしても、
ふたりを同時に相手どることはかなわぬぞ」
この台詞が予言通りになるわけですが、予言にしてはあまりにも適切すぎて、
未来を予測したかのような力に、私などは魔道士の力に戦慄しました。
いま読み直して、同じシーンを漫画で読むと、
ああ、なるほど確かにこの辺りの台詞を入れると、助長かなと思います。
ですが、私としては好きなシーンだったので、ちょっとそこが残念でした。