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ヒデオを主人公とした長きに渡る物語に、終わりがくる時が来たようです。
彼はかつての聖魔杯で、まったくなんの特殊能力も持たず、
ハッタリと外見の怖さと、パートナー・ウィル子の力だけで勝ち進んでいきました。
なんか、あげてみるとだけって感じじゃないですが。
マスラヲの際は、ヒキニートだった彼が後ろ向きな前向きさで、
天地魔界に敵う物のない最強の神、闇に認めさせてその契約者となる所まで行きました。
ただ、その力を彼は振るうことはない。
このレイセンでは、最新の電子の神となったウィル子、闇の端末ノアレと、
強力無比な存在との契約から、召喚師というカテゴリーにいるヒデオですが、
それでも彼は変わることがない。
主人公とは変わったり成長していくものだったりしますが、
今回の8巻のあとがきにあるように、ヒデオに限って言えば、
それは彼のキャラクター性を変えることになってしまいます。
これが、本当に難しい。
ヒデオが最後まで、彼自身の個人で持つ良心を振るい、
形がない組織というそれこそ一個の世界と戦う選択は、
感服するほかないと思いました。
組織というのが、作中で何度も言及されますが、
どこかに巨大な悪の秘密結社があって、その奥底にラスボスが待ち構えている────。
そういう類のものではなく、世界各地に点在し、政府や企業、
表の顔を持つ地位の高い、もしくは天才的な能力を持つものたちが、
非人道的な事をしながら、それを人道に用い、経済に還元しながら、
確固たる形を持たず存在するものでした。


だから、私としては今回はマックルが救われただけで、
組織は今後も暗躍し続けるのだろうと、
やや嘆息気味に読み進めていたら、最後でこうきたかと(笑)。
組織が盤面どころか、試合会場まるごと支配するとしたら、
鈴蘭やウィル子、恐らく魔殺商会も手を貸しているでしょうし、
ヒデオもその人脈をフルに活用しているはずです。
組織の用意した全てを叩き潰して、
あらたな聖魔杯というテリトリーへ、彼らを叩き込むという荒技。
やや、苦いストーリーが続いたのですが、最後で喝采をあげました。
やりおる、林先生。


今回、あとがきで気づいたのですが、
精霊サーガの前振りのはずでしたよね、レイセンって。
めちゃめちゃ長続きしてたんですが(笑)。
それはともかく、ヒデオは今回で主人公を降りる事になるようで、
ちょっと残念ではありますね。
まぁ、戦闘力が跳ね上がっていく作品で、戦闘力がない主人公って、
すごい扱いづらそうだったなとは読んでいて思いましたが(笑)。
ただ、直接的に戦う力がないからこそ、
彼の良心から絞り出される言葉、行動に説得力が出てきます。
風変わりでしたが、いい主人公だったと思います。


しかし、次の主人公はどういう形になるのか……。
構想に時間がかかるというお話なので、気長に待ちます(´ω`)。