鋼の錬金術師 17 (ガンガンコミックス (0744))

鋼の錬金術師 17 (ガンガンコミックス (0744))

今回は冒頭のスロウス来襲、そして彼の掘り進めてきた穴の謎の解明に物語が費やされた巻でした。戦闘が少ないという声も聞こえるのですが、まぁ、ドラマ部分が秀逸なので、私としては満足して読み奨められました。実は、連載で読めていない箇所が多くて、新鮮な驚きがあったというのもありますけど(笑)。


まぁ、アームストロング少将に萌えていたというのもありますが(笑)。しかし、少将って、女性上司としてはかなり理想的ですよね。私だけかもしれませんが。冷静で厳格。人好きのするタイプではないけれど、とても現実的な視野を持っている。要求するハードルは高いけれとも、部下に対する扱いが公平無私。それを皆が知っているからこそ、あのブリッグズの堅牢な団結があるわけです。


今回、スロウスの掘ってきた穴を捜索することでヒントを得たエドが、過去の紛争地域を点とし、線で繋いでゆくことで、アメストリスの地下に、巨大な練成陣が描かれていることを知ります。これは、ヒューズ准将が知りえてしまい、エンヴィーに殺害される因となった件ですが、それに気づくのにこれだけ時間がかかったことから鑑みても、ヒューズがどれだけ切れる男だったか、よくわかるというものです。ヒューズが人体練成の陣を見たのは、4巻でエドが入院している病院だったわけです。そして、軍法会議所の資料に照らし合わせて、この国の真実を見出してしまった……。彼の死の重さを、再確認した思いです。きっと、ヒューズの仇は大佐が討ってくれると私は信じています。


で、それに関連して一つ。気づかれた方も多いかとは思いますが、今回のホーエンハイムの回想。家族と共に年老いて死にたいという願望から、彼は自身の不死性を絶つための旅に出たのでしょう。その直前、エドがスロウスの穴で書き上げた、巨大練成陣と同じものを書き、「あの野郎…」と毒づいています。あの野郎=お父様であることは確かです。


ところで、シン国から来たリン・ヤオとシャオ・メイが同じ感想を言っていたのを覚えておられるでしょうか?シャオの方が克明に書いていたので抜粋すると、「この国に入ってから違和感を感じていたのですが…(中略)…足の下をたくさんの何かがはいずりまわっていル……」その、何かが今回姿を現しました。今回の話の核となる、スロウスの掘ってきた穴。つまり、アメストリス全土を網羅する巨大な練成陣。その中を、何かがはいずる…? いや、なにかもっとおぞましい移動の仕方をしていました。なぜおぞましいと形容したかといえば、スミスたち先遣隊の運命を見れば、自明でしょうか…?あれがホムンクルスなのか、それとも練成陣を完成させるために地ならしをする何かなのか…。それは現段階ではわかりませんが、エンヴィーの身体にくっついている人々並におぞましい遍歴を経たものなのでしょう。


ブリッグズ編はアームストロング少将がやはり随一で格好いいのですが、複雑な過去を持つマイルズ少佐も実は結構好きです。キンブリーに時間稼ぎの為に、イシュヴァールの事を拘泥しているような演技を…いや、振り切れぬ過去なのでしょうが、それを抑えて、演技するマイルズ少佐に、その命令を下したアームストロング少将の信頼と、彼女への少佐の揺ぎ無い忠誠が感じられて好きなシーンでした。


とりあえず、レイブン中将の一件は、表題のアームストロング少将の言葉で溜飲が下りました(笑)。まぁ、連載を読んだので、アームストロング少将がどう上層部へ食い込んで行くのか、その辺りは知っているのですが、それはコミックスが出て明かされてからにしますか(笑)。いや…しかし、面白い話を面白いまま続けるって事は、とてもとてもとても大変ですよ。荒川先生は素晴らしい。やはり、担当の下村氏も、先生が自由にできる環境を整えているのでしょうね。あー、下村氏には最大限の謝辞を。ボイン、削らないでくれてありがとうございました(笑)。