聖魔グランプリが一番派手なイベントではあるのだけど、
その後の酒場のセイレーンさんや、さらに次の火星人やリトルグレイとの戦い(笑)?
の方は、違う意味で派手で、いろいろかっさらっていった感じがあります。
ウィル子とヒデオは、ややウィル子の凄さに押されがちなのですが、
ヒデオのここ一番に見せる根性は、
なんかその限界値がどんどん上がってきていると思いますね。
最初の時点だと、聖魔グランプリの時の根性は見せられなかったと思うので。


書き下ろしのANOTHER ROUNDで、
この聖魔杯の裏で動いている、アーチェスたちアルハザンの目的が明らかになります。
どうも、公に魔人の存在を認めさせて、
行く行くは元首が魔人の国家を作りたいという中々に壮大な目標を掲げています。
昔、銀河英雄伝説で、善人の独裁政治と悪人の民主政治のどちらが幸せかという問いで、
ヤン・ウェンリーは後者だと答えました。
一個人の采配で、万民の行く末が決まるくらいなら、民衆の衆愚で滅びろと(やや誇張してます)。
私もヤンの考えに賛成なのですが、アーチェスたち魔人という、
かなり長寿命を持った存在が、善政を敷くというのなら、
それは独裁国家に考慮すべき価値が生まれてくると思います。
ただ、長寿の魔人が、ずっといい政治をできるかという事については、
人の心は移ろいやすいものなので危惧を覚える面もありますが、
そこについて、アーチェスは一つの案を持っているようです。
すなわち、かつての円卓会議(魔王級の魔族による監視機関)の復活。
元首の魔人が悪政を敷いたとすれば、ただちに抹殺という感じにすれば、
それこそかなり理想に近い良い国ができる、かもしれません。


ただ、それだけを見れば、鈴蘭たちと共闘できるのでしょうが、
彼女たちと協力できない因子が、アーチェスたちにはあります。
鈴蘭が一切の犠牲を出さないと思っているのに対し、
アーチェス達は理想のために犠牲を出すことを、
まったく躊躇わないのです。
しかし、一歳の犠牲なく何かを得るのは、無理なことなので、
この三巻ではアーチェスたちの考えに、筋が通っているように見えるのですが…さて?


魔人の国家建設というのは、とても興味深いものです。
架空世界で長寿命の名君が善政を敷いたなら、
という誰でも考える空想を、どう物語で表現するのか。
その理想を叶える為に、どこまでやろうというのか?
次の巻がとても楽しみです。