鋼の錬金術師 19 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 19 (ガンガンコミックス)

19巻を読み終わって、まず最初に頭に浮かんだことは、
「この下りを読み逃していたのは痛恨だった」ということでしょうか。
その後の話の印象が、まるで違ってくるエピソードでした。


幾度か本編で名前が挙げられていた、一夜で滅んだというクセルクセス王国。
そこで出会った、奴隷階級の23号(後のホーエンハイム)と、
彼の血から生まれたというフラスコの中の小人ホムンクルス
今回、二つ気になったことがあります。
まず一つ。
フラスコの中の小人ホムンクルスの顔。
国土練成陣を蠢くプライドと酷似している理由は、
後に明かされるのですが、それよりも口だけで笑っている状態の彼?が、
エドが何度か出会った真理の奥にいた白い人に非常に似ている印象を受けました。
ホーエンハイムに披露したように雑多な知識を持ち、
錬金術師や王が、彼に不老不死の教えを請う程の秘宝を知っている。
私の推測では、あのフラスコの中の小人ホムンクルスとは、
ホーエンハイムの血液という人体の部品を使用し(簡易な人体練成)、
真理への到達によって、真理の扉の向こう側のあれを、
限定的に、端末として、こちら側に具現化させた存在なのではないでしょうか。
ただ、限定的と表現したように、不完全なフラスコの中の小人ホムンクルスは、
その名の通り、フラスコの中でしか生きられない。


豊富な知識を持ち、それを生かせる知性を兼ね備えた存在が、
自身の境遇に満足していない。
これは、とても危険な状況です。
きっと、その二つの武器を以て、いかなる手段に訴えても境遇の改善を求めるはず。
その結果、あのできごとが起こってしまいました。
フラスコの中の小人ホムンクルスは身体を得て、
クセルクセス王国は一夜にして滅び、
血を与えたホーエンハイムは、本人が望まぬ朽ちぬ身体(賢者の石)を得る。
クセルクセスの多くの民の、悲鳴と絶叫をその身に感じたまま……。
このシーンはとても空恐ろしさを感じて、ゾクリときましたね。


もう一つの気になったことは、
ホーエンハイムとお父様の老化のスピードの差でしょうか。


「朽ちぬ身体を与えた。この国の人間全ての魂と引き換えにな。
──ま、半分は私がもらったがね」


こう、フラスコの中の小人ホムンクルスホーエンハイムに話しています。
つまり、クセルクセス王国を使用した国土練成陣の恩恵は、
二人で均等に分けたという事のようです。
で、時間軸が現在に戻った時、二人の顔を見比べてください。
フラスコの中の小人ホムンクルス(お父様)の顔は、深い皺が刻まれていますが、
ホーエンハイムの容姿は、その頃(クセルクセス滅亡)から変貌していません。
お父様とホーエンハイムの行動の差を考えてみると……。


・お父様
色欲・強欲・怠惰・暴食・嫉妬・憤怒・傲慢を切り離し、
特性を付加したホムンクルスとしている。


ホーエンハイム
ホムンクルスは作っていないが、子供を為している。


並べてみると、お父様が感情を切り離してホムンクルスを作ったこと、
つまり、内なる賢者の石の力を消耗したことが、
外見の老化という形で、顕れているのではないでしょうか。
現時点では推測なので、もしかすると、ホーエンハイムと別れてから、
お父様が何か大規模な練成を行い、力を消耗したから、老化したとも考えられます。
外見が老化したことが、イコール消耗となるのなら、
今一度、クセルクセスと同じように、国土練成をし、
賢者の石の属性を、自身に付加しようとしている事もうなづけます。


人によってはやや退屈なエピソードであったかもしれませんが、
私のように設定好きには、堪らない話でした。
次の巻がとても楽しみです。