スター・ウォーズ セスタスの偽り〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

スター・ウォーズ セスタスの偽り〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

スター・ウォーズ―セスタスの偽り〈下巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)

スター・ウォーズ―セスタスの偽り〈下巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)




ジェダイ・キラーとあだ名される強力なドロイド。
これまでの、ドロイドとは一線を画した戦闘力。相手の行動を予測して動作するそのドロイドは、
通常のドロイドはおろか、クローン・トルーパーすら退けるほどの力を発揮する。
そのJKを、分離主義者達が政情不安定な惑星セスタスから、大量に手に入れようとしている。
彼らのその企みを阻止するため、オビ・ワン=ケノービとキット・フィストーの二人のジェダイ・マスターは、
4人のクローン・トルーパーたちを引き連れ、惑星セスタスへ向かうが、
すべてが偽りで彩られたセスタスにおいて、真実を語ったのは、一体誰か……?


大まかですが、あらすじはこんな感じです。
最初、キットが活躍しているというので、購入しました。
たしかにキットは活躍しています。ジェダイ・キラーに唯一勝った存在でしたり、
そのライトセイバーの技量もそうですが、彼の深い洞察や思索も披露してくれています。


ただ、この話の主人公は、一人のクローン・トルーパーでした。
一部のクローン兵から選ばれる、エリートであるアーク・トルーパー。
その一人である、ネイトというクローン・トルーパーは、
セスタスの事件において、様々な経験をします。


感銘を受けたキット・フィストーに、ジェダイのように動けるようになるため、
ジェダイたちが最初に行う訓練を習い、大きな成果をあげ、
兵士ではなく、身体を自在に操る戦士へと成長していきます。
彼らクローン・トルーパーの遺伝子上の父親となった、ジャンゴ・フェットの、
元恋人と出会ったり、彼女に連れられて、素朴ですが豊かな平凡な生活を送ったり。
そして彼は、非公式ながら、ジャンゴタット(=ジャンゴの兄弟)という名前を名乗るようになります。
彼の中の遺伝子は、兵士たる事を要求するのですが、
彼の中の人の心は、ふと思うのです。


「自分は兵士だが、こんな生き方もあったのかもしれない」


と。


ただ、そんな彼にも、選択の時が来てしまいます。
オビ=ワン達の待機命令を破らなければ、セスタス数百万の人が死んでしまう。
彼の愛した素朴な人達が死んでしまうという、瞬間、
ジャンゴタットは、遺伝子に刻まれたトルーパーの規律を破ります。
命をかけて敵の基地に乗り込み、衛星軌道上の戦艦から、
自分のビーコンめがけて撃つように指示して……その生涯をまっとうします。
子供達が歌った古い歌を、口ずさみながら……。


エピソード3で、私が一番衝撃を受けたのは、あれだけ朗らかにオビ=ワンと会話をしていた、
コマンダーコーディーが、パルパティーンのオーダー66が始動しただけで、
簡単に裏切ってしまったということなんです。
クローン・ウォーズのアニメを見る限り、昨日今日の付き合いじゃありません。
でも、トルーパーにとって、遺伝子に刻まれたオーダーは、
その友誼を捨てなければいけないほど、
生死をわけた戦友にあっさり銃口を向けてしまうほどに、抗い難いものだったのです。
それに、打ち勝つことがどれほど困難であることか……。
にも関わらず、ジャンゴタットは、それに勝ったわけです。


彼はトルーパーのオーダーには背きましたが、
一人の人間としてのオーダーを、最後まで貫いたと私は信じています。


絶版してしまっているのが残念ですが、
スターウォーズをご存じの方は、是非読んでみて下さい。
きっと、クローンウォーズの物語がより深く心に染みいるようになると思います。