- 作者: ジョン・ネイ・リーバー,ジョン・カサディ,石川裕人
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2011/09/28
- メディア: 単行本
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10/10
9.11テロの時になすすべもなかった、アメリカのヒーロー達。
彼らのテロに向けた心情や、その苦悩を表したシリーズが幾つかでましたが、
このキャプテン・アメリカ:ニューディールは、その中でも最高傑作と言ってもいいと思います。
ツインタワーの瓦礫を片付け、生存者を捜すキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。
もう、このシーンを見ただけで、私は涙目状態というか。
キャプテン・アメリカという人物に思い入れが非常に深く、
彼の誠実で思いやり深い性格を考えると、一心に瓦礫を引っ繰り返している姿が、
生存者を求め続けるその姿が、あまりにも痛ましく……物理的な痛みすら感じられるほどです。
アラブ系の若者を、テロで娘を失った老人が刺そうとする。
その刹那、シールドで両者の間に立ち、老人を諭すキャプテン・アメリカ。
ああ、だから、彼はキャプテン・アメリカと呼ばれるんだ。
彼はアメリカ国家の為ではなくて、あくまでそこに住む人々の為に、
その誇りと精神と夢を守る為に、無敵の楯を持っているのだから。
単純にイスラム系の人々を悪と見なさないで、
地雷で手足を失った子供の兵士などを登場させ、それを奪ったのは誰か。
憎しみには原因がある、その原因を直視しなければならないと、
そう、冷静に言い聞かせてくれています。
9.11のテロから一年あまりで、単純な熱狂や怒りだけではなく、
これほどまでに冷静で、一歩退いた視野に立ってあの事件を振り返る物語に、
作り手のキャップへの愛と、あの事件への思いを感じ取ることが出来ます。
そして、大きな傷を負ったアメリカと、キャプテン両方の精神的復活を象徴するであろう、
ラストページは圧巻というか、遂に私の涙腺が崩壊しました(笑)。
普段アメコミを倦厭している方にも、是非読んで頂きたい一冊です。
アメコミを読んだことが無い方には……一つだけ言わせて下さい。
キャプテン・アメリカの人柄について。
彼は、誠実で勇敢で、そして穏やかなユーモアのある、
例えばあなたに幼子が出来た時、その子を安心して預けられるような、
信頼を抱ける人物であると、それだけ知っていて貰えればいいのですから。