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ヴァンパイア化を目指す人々の中に、マヨールの妹ベイジットがいて、
彼女を追って、マヨール達が再び原大陸へと行く話です。


かつてのシリーズでも、オーフェン=キリランシェロが、姉であるアザリーを追って、
牙の塔を出奔する事から物語が始まりました。
今度は、マヨールの妹のベイジットがアザリーの役ですが、
この辺りマヨールを主人公に置く為に、オーフェンの辿った軌跡を、
踏襲させるつもりなんだろうかと思って、興味深く見つめています。


所々入る、ベイジットとの記憶。
いいエピソードもあり、あまりよくないエピソードもあります。
ただ、それらが混在している為、マヨールの感情の葛藤が見て取れます。
そして、ベイジットに出会った時、鬱陶しかったと内心を叫ぶマヨール。
ただ、これはベイジットもそうだったんじゃないのかなと。
だからこそ、前回の原大陸渡航でみたヴァンパイアという力に魅せられた。
なんか、もう、この二人の結末からは、悲劇という臭いしかしませんが。
フォルテは、覚悟していると思うんですが、
ティッシは旧作でも家族を失うことを病的に怖がっていたので、
ベイジットに何かあったら、オーフェンを絶対に許さないんだろうなーと。


そしてそのオーフェンですが、いい親父になってますね(笑)。
年を取ったおっさんになったというんじゃなくて、
父親として父親的な思考になっていて、なおかつかつての彼だと割り切れなかった事にも手を染める。
20年の月日が、あの日の傷ついた少年のまま20歳を越えたような青年に、
深みと成熟さと、経験への揺るぎない自信を感じさせて、
変化したなぁと思いつつも、圧倒的な絶望に対して諦めを持たない不屈さは、
相変わらずだとニヤニヤしながら読んでいます。
続きは春だそうなので、楽しみに待っています。
やっぱり、慣れ親しんだ文体はいいですね。最近、文章が読めなくなってきてましたが、
オーフェンをきっかけに積んでいた小説を崩し始めました(笑)。


巻末の魔術戦士の師弟が、非常にいい雰囲気で好きですね。
なんか、かつての無謀編を彷彿とさせるというか。
しかし、ラッツベインの才能は半端ないですよね(笑)。
エッジが技術と精神力なら、ラッツベインはその巨大な魔力というか。
そして、かつての少年、マジクが本当に強くなって。
正直、描写だけ見ていると、昔のオーフェンより強いんじゃないかと(笑)。
だって、山のような構成とかいう表現は、マジクくらいしか聞かないんで。
ああ、あと、挿絵見る限りイケメンじゃないですか、マジク(笑)。
……身近すぎて、だらしない面ばかり目に映るんですかね、ラッツ達は(笑)。