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今回の話は非常にテーマが重いものでした。
白浜兼一が道を誤った場合、こうなる末路。
それを、同じように達人に師事し、似た性格の田中勤という弟子、
彼が愛した師匠の娘と、環境を同じにして達人まで達した彼の死。
そういう形で描ききったのですから。
もし、ケンイチに当てはめるなら、長老が殺され(ちょっと想像つかないですが)、
ケンイチの子供を身ごもった美羽が殺されたわけなので、
これは復讐に狂うのも仕方ないと思います。
田中さんがDofDで初登場してから、かなりの年月を経た上でのこの結末。
私は、先生の迷いを感じました。
やっていいのか? 彼を救わなくてもいいのか?
一読者としていえるなら、この事件はやって成功だったと思います。
重苦しく、読んでいて楽しい訳ではありませんが、
この一件を踏まえてのケンイチの成長。
そして、如何なる達人にも屈せず、ボロボロになりながらも、
自分の主張を曲げず、折らず、押し通してきたケンイチが、
初めて自身の思想を貫けなかった瞬間。
そう、かけられる言葉がなかった。
この話にはとても意味があると思います。
いつか、成長したケンイチが、拳聖に対して、
彼自身の言葉でいつも貫き通した考えを叩きつけられたなら、
それを持ってこのストーリーを完結にしてもいいのではないかと、
そう思える程の展開でした。


その拳聖ですが、実は私はこの人嫌いじゃありません。
その徹底した武術への妥協の無さ。
それに対してかける熱意は、本当のものであるわけです。
しかし、武術の進歩・進化の妨げになるものへの冷淡さ、
それを突き進む為に倫理観をどこかに投げ捨てている部分は、
評価が分かれるのではないかと思います。
あと、ちょっと油断しすぎるというか(笑)。
拳魔邪神より、拳聖の方が死ぬイメージありませんでしたが、
あの油断する所が、見ていて危ういと思えてきました。
この人は武術の為なら他人の命も、自分の命も省みることがないが、
その性、その熱意が為に命を落とすのではないか。
最近、そう思えてきました。