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9/10


ナイトクローラーの死にすごいショックを受けている自分がいて、
その事にとても驚いてしまっていました。
ナイトクローラーこと、カート・ワグナー。
あの恐ろしい外見にも関わらず、敬虔で慈悲深い、けむくじゃらな青年を、
私は自分が思っていた以上に気に入っていたようでした。
あのビーストがスコットに掴みかかって激高し、
ウルヴァリンが葬儀の時に彼について訥々と語る下りが、心にしみいってしんみりしてしまいました。


一応、事前情報で色々知っていたので、事件自体は目新しい感じはなかったのですが、
知っている事と実際に見る事には天と地の開きが存在することを、
私は久しぶりに思い知らされました。
サイクロップス。スコット・サマーズの言動と行動が先鋭化していること。
今回、ホープを守るために、スコットは多くの者を犠牲にします。
目的の為に犠牲を強いる、犠牲を省みない姿勢はリーダーとして、
とても正しいものではあるのですが、その為には仲間達に対して、
コンセンサスを得ておく必要があったと思うのです。
いまのやり方ではいささか独裁的で、セカンドカミング読んでいる間、
ずっと私の中のBGMは、BEYOND THE TIMEでした。
この後、ユートピアに立て籠もって、ミュータント達と人間の関係は、
現状でも戦争レベルなのにさらに悪化します。
そして、サイクロップスの姿が、あの青いコスチュームが、
かつてのマグニートーの纏った赤いそれに重なってしまうのは、
私の目がおかしくなってしまったからではないような気がします。
そのマグニートーは、一気に老け込んでしまいましたが、
それでも現状のミュータントの中では最強クラスなので、
彼のファンである私としては非常に嬉しいところです。
ただ、スコットが間違った意味でマグニートーの後継者たらんとしているようで、
その部分が非常に心配でなりません。


X−MENタイトルはその発祥の時から、人間からのミュータントへの差別と迫害、
それに反発するミュータントによる人間の虐殺という、
互いに尻尾を喰らいあうウロボロスのような、
解消することが極めて難しい問題が巨人のごとく横たわっています。
結局の所、隣人が巨大化するかもしれない、テレパシーで頭の中を覗くのかもしれない、
火を噴くのかもしれない、狼に変身するかもしれないという恐怖に、
人類は耐えられないのでしょう。
ハウス・オブ・Mの世界で、ほとんどの人間がミュータントとなった世界が描かれました。
あの場合、スカーレットウィッチが行った現実世界改変のせいでああなっていましたが、
マグニートー王家が支配しているという所を覗けば、
半漁人も、空飛ぶ子供も、爪がでる少女も、雷を出す青年も、
その能力を理由に差別がされる事が無く暮らしていたので、
あれはあれで一種の平和な世界なのではないかと感じました。


それほどに、セカンドカミングで描かれているミュータントの現状は悲惨です。
200人に満たないミュータントvs世界人口の人類との戦い。
敵は多く、憎悪に満ちて、ミュータントを殺し尽くす為に、
自分自身が醜悪な化け物に変わることをいとわない、それほどまでに磨き上げられた狂気。
差別を正義で正当化すると、かくも醜いものになるのだと、
まざまざと見せつけられて吐き気がしました。
続刊は是非読みたいのですが、読みたくないような気もします(笑)。
それほどまでに、重苦しい。