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シビル・ウォーの前に出すつもりがすっかり忘れてて、出し忘れてしまっていました。
アントマン……実の所アベンジャーズメンバーで唯一嫌いなヒーローと言っていいでしょう。
アントマンことハンク・ピム。世界的な生化学者である彼はピム粒子の発見で、
物質を自在に縮小・拡大することができるようになり、アントマンというヒーローになる。
まぁ、ここまではスパイディやら他のヒーローと変わらないのだけども、ハンク・ピムは「DV男」と言われるほど、
自分の妻──ワスプこと、ジャネット──を殴る蹴るして、殺しかけてしまうことも。
その普段からの外道的な非道のせいで何度も死んでは生きかえるをしていて、
ある意味ヴィランより嫌われた男なわけです。
ただ、ディスクウォーズ:アベンジャーズでは、ハンク・ピムを誰よりもプライドが高く、
誰よりもチームを愛し、己の卑称さを憎むがゆえに、チームのメンバーに素直になれない人として設定して、
彼が勇気を振り絞って仲間のために命をかけるシーンは、キング・リュウ……やりおるやりおるわいのう!
と画面の前で涙しながら不覚にもアントマンを応援してしまいました(笑)。
ここでアントマンへの悪感情が薄らいだのですが、ハンク・ピムはなぁ……とわだかまりがあったところ、
二代目アントマンのスコット・ラングが主人公という変化球を打ってきて、それならちょっと見てみようと。
突然の奇襲攻撃で私の猜疑心に固まった精神の砦に、一撃を食らわされたような気分でした。


結論からいうと、非常に面白かったです。
マーベルヒーロー物としては、ある意味一番分かり易く入り安い導入だったと思います。
導入物って、番号がないアイアンマン、キャプテン・アメリカマイティ・ソーなどなのですが、
その中でも異例なほどに分かり易い展開でした。
基本的な骨子としては、ダメ親父が一念発起して娘のために人生を変えようとする話です。
この骨子だけ見ても、普通に成功しそうなストーリー展開で、ここに彼がアントマンになる訓練、
駄目な仲間達との友情、ハンク・ピム博士の執念と懺悔、母の死にまつわる秘密について、
娘のホープヴァン・ダインの父との確執。
などなどが組み込まれて、飽きさせない展開になっています。


マーベル・シネマバース、マーベルのアメコミを原作とする映画世界ですが、
そこがヒットした要因の一つに、30・40年以上続いて複雑な設定、事件、人間関係を、
上手く再構成して、必要な物と不要なモノをよりわける取捨選択が上手い。
というものがあると私は感じています。
このアントマンでは、長らくDV男として汚名がつきまとったハンク・ピムを初代アントマンとして、
彼のDV部分は不要なモノとして投げ捨てて、妻の死にまつわる秘密を解き明かそうとする科学者として描いています。
手が早くてすぐに人を殴る部分は残ってますが、ちゃんと悪党を殴るのでいい改変でしょう(笑)。
今回はやられ役になってしまいましたが、キャプテン・アメリカ:ウインターソルジャーで登場したファルコン。
ハンク・ピムの若い頃の同僚として、ハワード・スターク(トニー・スタークの父親)を登場させたりと、
シリーズを見てきた人へがニヤリとできる部分もあります。
難点としては、大きくなったり小さくなるだけのヒーローなので(笑)、
飛び道具のビームなどがないせいか、アクションがちょっと地味になりがちなのですが、
そこはカメラワークと演出と戦うステージの選び方が上手いせいで、見せる戦闘になっています。
あと、個人的にグッと来たのは、件名にある娘の為にスコットが命をかけるシーンで、
その前に奥さんの再婚相手のパクストンが、血の繋がらないキャシーを命がけで守ろうとするくだりです。
刑務所入りしていたスコットとしては、警官のパクストンと奥さんが再婚することには反対でした。
事あるごとに意見の分かれる二人。まぁ、パクストンの言ってる事がご尤もで、
それをスコットも分かっているからこそ、アントマンとなることを決めたのでしょうが。
そして、パクストンがキャシーを身を挺して庇おうとし、それを見たスコットが、
自分の命を娘のために捨てることを決意したんだと二重の献身を見せてくれて、
それを重ねてくるかと目から汗が止まりませんでした。


最後にはキャプテン・アメリカ:シビル・ウォーへと続くいつもの引き、
ホープヴァン・ダインが母親のワスプを継承する含みを持たせて終わっています。
まぁ、ワスプの映画化は決まってるので、ファンサービス的な部分かなとも思いますが。
このアントマン辺りからマーベル・シネマバースのセカンドステージとなっているので、
アントマンでこの世界に入門するのもいいかもしれません。