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魔界転生のヒロインはお品です。
味方にも女性キャラがでてスポットが当たるのですが、
山風先生の十兵衛ものだと大概敵側の女性キャラが十兵衛にほだされて、
存在感を増してゆきヒロインになります。
Y十Mでは蘆名銅伯の娘、おゆらが。
そして、この魔界転生ではお品の中の葛藤が、彼女をヒロインたらしめています。
作中で天草が言っているように、お品たち三人は森宗意軒子飼いの忍びです。
そして、洗礼名が示しているように、キリスト教の信者でもありましょう。
幼い頃からこの為に修行し、準備を重ねて来て人間らしい生活をしてこなかった彼女ら。
お品も、最初は十兵衛を堕とす為に近づいた者の、
彼の人柄や無邪気な柳生十人衆と旅を続ける中、人としての情が芽生えてきて、
それが彼女を苦しめる結果となってしまいました。
そしてこれから彼女を過酷な運命がみまい、まぁ、この先はネタバレになるので黙っておきます。
私としては原作では十兵衛に気づきの描写がなかったのですが(お品がなにをしているかわからない)、
十兵衛がなにがしかのお品の行動に対して気づく描写があれば彼女が救われるのにと思わないではないです。
そこはせがわ先生のアレンジに期待したい所です。


そして、今回あっさりと片が付いてしまったように見える柳生如雲斎との対決。
魔界衆との戦いは、大概において決着が早いので十兵衛が圧勝しているように見えるのですが、
実際、ドラゴンボール天下一武道会みたいな何もない石畳の武道場で戦ったなら、
十兵衛は絶対に彼らに勝てません。それぐらいの地力の差があります。
棒太郎、胤瞬辺りは、10を人間の最大として十兵衛を9とするなら、
生前の彼らは8くらいの強さだったかもしれません。
ただ、魔界転生によって、12だの13だのの力になった彼らが、
まともに戦ったのなら、十兵衛に勝ちの目は完全になくなるでしょう。
棒太郎、胤瞬戦で十兵衛にとって幸運に働いたのは、
彼ら二人が十兵衛を殺す事を目的とはしておらず、身体を不具にして、
魔界転生を願うように誘うことだったわけです。つまり、手加減してました。
そのおかげで、手加減した彼らに奇策であったり、全力の先手必勝で有利にたち、
勝利すると言う事ができたわけです。
で、今回の如雲斎戦では、その手加減という枷がハズレました。
一回目の如雲斎との戦いでは、枷があったがため、
片眼を失った彼でしたが、二回目は全力でいきました。
そのため、真っ向勝負した十兵衛が負けそうになったわけです。
如雲斎は、生前から十兵衛と互角。もしくは、十兵衛を凌ぐ剣客であろうと言われてました。
恐らく、生前戦ったなら、老いた如雲斎が紙一重で負けたのでしょうが、
魔界転生して気力精力充実した彼ならば、そのような事はないでしょう。
それが今回如実に現れました。
お品の含みバリがなかったら、確実に十兵衛は負けています。
長々書いたのは魔界衆が存外弱いって声が聞こえたせいですが、
技巧を尽くした剣戟も好きなのですが、圧倒的な力を持った者同士の戦いは、
あっという間に決着するものなので、その辺り誤解しやすいかなと思って書きました。
ちなみに、Y十Mに出て来た会津七本槍は、漆戸虹七郎以外は、
魔界衆一人で容易く全滅できるくらいには強いです。


十〜忍法魔界転生〜の10巻。
お品の献身とヒロインっぷりを楽しみにしていてください。