シャチになりましたオルカナティブ (角川スニーカー文庫)

シャチになりましたオルカナティブ (角川スニーカー文庫)


8/10


異世界転生物も様々な切り口で展開するようになり、ドラゴンだのといった強力な生物、
普通に転生するのではなくて貴族家やゲームの中の悪役令嬢シリーズだの、
一定のパターンが出て来てそれなりにパターンが出そろったかな……と言う中、
学校のクラス丸ごと転生+主人公の女の子が蜘蛛に転生するという変化球というか、
魔球であるといえる「蜘蛛ですが、なにか」が登場しました。
かなり気に入った展開で私は面白く読んでいるのですが、
けっこうきっついシーンも多くて、やや疲れる部分もあります。


そして登場したのがこのシャチになりましたオルカナティブ。
まぁ、その名の通り、主人公=名前不明の女子高生が、不慮の事故で死亡した際、
天使に色々要望を伝えて容貌を決めて貰ったらシャチにされて草原に転がされるスタートという、
読んでて腹筋が破壊される出だしからしてかなり非凡だなぁと思わざるを得ませんでした。
主人公はオルカなのでステータス欄にオル子となっており、オル子と名乗っていますが、
彼女がとても頭が悪い(褒め言葉)のです。
主人公というのは特殊な場合を除いて頭よく見せるのが基本なのですが、
オル子は令嬢やらイケメンハーレムを夢見てドリームを語り出したり、
リンゴ食べて満足している楽しいイキモノだったりします。
で、頭が悪いだけかというとそうでもなく、基本的に善良であり、
人が良く、仲間のピンチには体を張って戦う気概も持っています。
メンタル強くて折れませんし(笑)。
あまり肩肘張らずに楽しめる感じのストーリーとキャラクターであり、
この書籍版はweb版とはまた違う展開になっているのでその辺りも楽しめます。


魔物転生や異種族転生もやり尽くされた感じがありましたが、
イデアや調理の仕方によってはまだまだいけるという感想を抱きました。
最初の天使黒幕説もありますが、私としては単なるうっかりくらいだといいのですが(笑)。


唯一の不満としてはオル子が前面に出てる表紙絵だといいのですが、
オル子がサブキャラクターっぽい立ち位置なので、スニーカーもまだまだだな、と。
「だ、誰が買うんだこの表紙……世界シャチ協会?」くらいの飛ばした表紙を期待してましたので、
その点だけが気に入りませんでした(笑)。