ウォルケンス王の悲劇

 リース公子に無理難題を言い、臣下からは、自分の価値観に適合する意見しか採用しないウォルケンス王。小僧呼ばわりや、余りにも高慢な態度を見るにつけ、ベルウィックサーガを始めたばかりのプレイヤーにとっては、顔も知らない帝国軍の将帥たちよりも、憎たらしい存在であると言えます。王家の優越性を信じ、血統で劣る存在(リースなど)は見下し、揃えた側近は都合のいいことしか言わない。かなり駄目な王様に見えますが、大概こんなもんです、王様なんて(笑)。むしろ、三代目くらいの王様としては、悪くない人物かもしれません。王家を尊び、その上で王権を強化して、貴族達(有力者)を庇護して彼らから利益を受け、前例に従って政治を行っていけばいいわけです。

 しかしながら、この戦乱の時代では前例をそのまま適用することはできませんし、王権すら不確かで、血統の良いモノが必ずしも正しいわけでも、優秀ということでもないわけです。そして、都合のいいことしか囀らない側近とは、いずれは破裂する風船を膨らませる道化のようなモノですし。実際、ウォルケンス王のこの性格が元で、帝国というよりラーズ教団が利用した結果、ウォルケンスは自身の尊大さ故に滅びてしまいます。彼がもっと危機感を抱いて、臣下から諌言を受け入れ、血統よりも実を重視して、過ちを顧みて詫びることができるような男であれば…。戦争の終結はもっと早くなったことでしょう。王とは自身だけに責任を持っているわけではありません。臣下に、民衆から有形無形の援助を受けている(搾取している)のですから、それが何故かと言うことを、考えなければならないのです。彼らは善意の後援者ではないのですから…。

 ところで、シェンナ王女はヘルマン伯爵(ラーズ司教が化けていたが)を除けば、ウォルケンスはまともになると言っていましたが、これは無理ではないでしょうか(笑)。ヘルマンはベルナードの時ともう一回くらいしか手を回してないので、リースへの厳しい態度は、ウォルケンス生来の資質から導き出されたものだと思えます。つまり、ヘルマンがいる、いないにかかわずウォルケンス王はリース公子を見下し、諸々の事態に適切に対応できなかったのでしょうね。まあ、ベルナードの投獄がなければ、西部戦線の崩壊はありえず、リース公子の父親であるバーンストル公爵は命を落とすようなことはなかったでしょうから、間接的にはウォルケンス王はリース公子にとって、父親の敵なのですよね。直接的にはゼフロスですが(笑)。

最後に一つ。ウォルケンス王にとって幸せだったことは、最後の最後で唯一の肉親を守るため戦い、そして看取られことではないかと思います。普通にヤーカーラムに殺されて、下水道に捨てられる可能性もあったでしょうから(笑)。