ホテル・ルワンダ サウンド・トラック

ホテル・ルワンダ サウンド・トラック

なんというか、その全てに圧倒された。


ルワンダにおける、フツ族ツチ族の根深い民族対立の中、
ついには大統領が暗殺される事態になり、一気にツチ族が虐殺される事態に。
そんな中、ホテル・ルワンダの支配人、ポール・ルセサバギナがとった行動とは…?


感動的なシーンは確かに多くあるのだけれど、そのシーンで涙腺ゆるい私が涙したことは書くまでもないのだが、
それよりも、怒りで涙がこらえきれなくなったのは、私としては稀有なことだった。
平和そうな民家の庭先に転がる、ツチ族の一家。幼い子供まで、銃で撃たれ殺害されている。
ポールが車を走らせる街は、おびただしい死体の群れで、さながら地獄のような虐殺が続いている。
そんな中、彼は「なんて酷い事を」としかいいようがない。言う以外の事ができない。
その悔しさが、伝わってきて、私は自然と涙を流していた。


最悪の状況の中、国連軍が難民の受け入れを拒み、外国人だけの脱出を刊行する。
ホテル・ルワンダには、1000人を超えるツチ族の難民が集まっている。
このままでは、みなが虐殺されてしまう……。
ホテルの従業員を含めた、すべての命運が、ポールにのしかかってくる。
軍司令官や、民兵たちとの命をかけたやり取りは、その重さゆえに、
シーンの全てに緊迫感を与えている。
こんなに緊張して、まさしく手に汗握ったのは久しぶりのことだった。
賄賂を使い、酒を出し、嘘を言い、なだめすかし、自分にできる全ての力を振り絞り、
家族と難民を守ろうとする、ポール・ルセサバギナ。


もう一度言うが、彼はただのホテルの支配人なのだ。
彼はヒーローでもなく、ごく普通の人だった。
人間としての尊厳が踏みにじられる状況下で、彼は正しい人間としてあろうとした。
そんな彼が、勇気という表現を越えた何かで、最後まで戦い抜き、大勢の人を救った。
現状を悲惨だ、と嘆き諦めてしまうのは簡単な事だ。
けれど、そこで膝を屈する事無く、立ち向かい続けることのなんと難しいことか。
過酷な現実、冷酷な真実に負けず、最善を尽くす人としての強さは、
彼が普通の人だったからこそ、強烈に見るものの胸を打つ。
だからこそ、あのラストシーンは、涙が止まらない。


手を叩いて笑える娯楽策ではないけれど、とても面白い。
最後まで、食い入るように見ていた。
まだ見ていない方は、ご覧になることをお薦めする。
きっと、何か貴いものを得ることができるはずだから…。