Fate/Apocrypha vol.2(書籍)

Fate/Apocrypha vol.2(書籍)


9/10


私自身は物語が始まる予兆や、サーヴァント達の終結に胸躍らせ、
楽しんでいたのですが、1巻はちょっとパンチが足りなかったという話も耳にしました。
2巻はその物足りなかった感想を吹き飛ばすかのような、
圧倒的な戦闘とサーヴァント達の因縁、活躍が描かれており、
ジャンヌもルーラーとしての強さや、彼女個人の気高さが描かれており、
全裸待機して3巻を待たざるを得ない展開になってきました。


アキレウスは私が嫌いな英霊ではあるのですが、
非常に好漢として描かれており、ケイローンとの会話でいい雰囲気を出していて、
長年私の中で育っていたギリシャのクズ英雄アキレスへのマイナスイメージを、
かなり払拭してくれました。
……ケイローンから語られた内容を吟味すると、誰かを庇って死にそうな気がします。
そうしたらもう、アキレウスへの長年のマイナスイメージが裏返って、
プラスに傾くかもしれませんが(笑)。


想定外なのか想定内なのか、ちょっと微妙なラインなのですが、
モードレッドが思いの外活躍してくれて、非常に嬉しい限りです。
というか、マスターとの連携が上手くいっていて、
本人も戦うに当たっての枷がないセイバークラスって本当に強いんだなぁと。


あと、今回、一番気に入ったのはジャンヌ=ダルクの描写でした。
物語を動かすヒロインとして、聖杯戦争のルーラーとして、
聖女として、サーヴァントとして存分に魅せてくれました。
特に心に残ったのが、ヴラド公との会見のシーンでした。
多くの人が知っているとおり、ジャンヌの最期は悲惨なものでした。
それを問われ、無念がないのかといい放つ公に対して、
一切の無念がなく、誰に共感されることもないだろうけれど、
自分だけが知り得る充足があったと。
ああ……この人は、英霊ではあるけれど、確かに聖杯戦争に参加はしないだろうなと。
その場にいた他の英霊が驚いたように、なにかやり残したこと、
悔いやら望みがある英霊が、聖杯戦争に参加します。
でも、なにもないのなら……。何も求めないなら、参加する意味はないわけで。
どうもルーラーとして聖杯戦争を監督する英霊は、
聖人系の悔悟のない人が選ばれるようです。


そして、今回驚愕したのは、ジャンヌがヴラド公にいった言葉です。


「神にすら見捨てられたお前に?」
「──それこそ愚かです。主は我々を見捨ててなどいませんよ。
いや、そもそも主は誰一人として見捨てていらっしゃらない。ただ、何も出来ないだけです」


自分は、その主の嘆きの声を聞いた。だから助けよう、と。
私にはこの下りが衝撃的でした。
恐らくはどなたでもあると思うのですが、普段信じてもいない神に、
助けて下さいと、真摯に無責任に祈ることがあると思います。
私は自分の為に祈ったことはありませんが、
私から見て、本人にまったく咎がないのに苦しんでいる友人、
肉親の為に心から神に祈ったことが二度あります。
いずれも、私の祈りは届きませんでしたが。
それは、祈りを聞き届ける=神は万能であるという私の勝手な思い込みが、
そこにあったからこその傲慢だったのかもしれません。
件名に書いていますが、ジャンヌのこの考えは、
読み終えたときに驚き、飲み込み、咀嚼してああと納得しました。
私の聖女感に、巨大な影響をジャンヌ=ダルクは与えてくれそうです。


Fate/zeroの青ヒゲの旦那は、ジャンヌと再会したら、
速攻で正気に戻っちゃうんじゃないでしょうか。
それほどの凄みが、ジャンヌにはあります。
いや、本当に良かった。
この下りを読めただけでも、Fate/Apocryphaを手に取った甲斐があったというものです。


3巻も本当に楽しみです。最後のあれで、サーヴァント達がどう動くのか。
活躍の割に挿絵が甲冑姿だけだったモド子が、残念でしたが(笑)。