辺境の老騎士 1

辺境の老騎士 1


9/10


なろう小説の中でも異色の作品であり、
恐らく普通のライトノベルではカテゴリーエラーで弾かれそうな、
老人を主人公にしたストーリーになっています。


なろう小説って言うのは全てが全てそうではないのですが、
主流はファンタジー世界などの異世界に現実世界の人が転生、
チート能力で活躍するストーリー。
もしくは、MMOなどネトゲに入り込んでチート能力でryっていうのが、
石を投げればゴロゴロ当たるって感じになっています。
なので、それが主流であるというのに、その主流のカテゴリーで小説書いてない人は、
かなりの自信家か、自分のやりたいことが流行に流されていない、
しっかりとした骨格をもって文章として出せる人なので、
カテゴリーが変わった人を拾うと面白かったりします。


この老騎士もその一つで、かなり渋いファンタジー的な世界で、
若いイケメンが転生してきたりしないで、その世界で長年地に足をつけて生活した、
一人の騎士、バルド・ローエンが死に場所を求めての旅を綴ったものです。
文章が短く、簡素で簡潔。文飾の限りを尽くしてしまう私としては羨ましいです。
さらに、飯テロなレベルの異世界料理グルメ探求。
ほぼ、毎回、美味そうな食事風景が濃密に描かれており、
ファンタジー剣客商売と言えば分かりやすいかもしれません。
バルドは、体痛い、腰痛い、肩が痛いといいつつ、
けっこう強いので、ある意味ジジイ無双的な部分もありますが、
普段が控えに控えた人なので、まったくイヤミを感じないのもいい点でしょうか。
一話が短いので、ポツポツ読めて楽しいので、じっくり味わって欲しいです。
特に第五章の仇討ちは、読後のなんともいえない気分は、
老騎士を象徴する義であるとか、人として背を伸ばして生きる事、
そういった部分が凝縮されているので、
美味い酒でも飲みながら読みたいものです。


一点、残念な点があるとすれば、地図があるとバルドの旅の足跡を追えるので、
二巻以降は地図つけてもらえると楽しめるかなと。