魔法少女プリティ☆ベル 8 (BLADE COMICS)

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8/10


ヘビーな話が続いてきたので、閑話的な話が挿入されていたことで、
けっこう緊張感が取れてゆっくり読めた気がします。
後半はそんなこと言ってられませんでしたけど。


ところで、海魔族に対する処遇がけっこう甘いなーと読んでいて感じました。
魔族とか天使とかファンタジーな事を言っていますが、
高度な文明を有して、敵国への宣戦布告などもある世界です。
南軍が海魔にあれだけ蹂躙されていながら、
ジロウさんがかなり穏便な手段で事態を解決しようとしています。
少数精鋭で政府を抑えて、首脳を屈服させて戦争を終わらせる。
ルラの目的が魔王軍の消耗・弱体化である以上、
低燃費・低コストでサクッと事態を解決するのが得策ではあります。
海魔の国を大軍で攻め滅ぼしても、魔力の燃費が悪くて勿体なくて、
ルラを喜ばせるだけだっていう事も分かります。
ただ、南軍の国民感情を納得させて、
首都陥落で士気が低下している彼らに活力を与えて、
ルラの手駒になりそうな連中を根絶やしにするのは、
残虐な事を言っているのは承知の上で、悪く無い手だと思います。
イタカさんが言っているように、それと本人が話しているように、
シャルエルさんがいけば、海魔を全滅させることができます。
南軍としてはかなり低コストで、敵を滅ぼせますし、
力を他の魔王軍から借りたとしても、自軍の魔王様が首都を踏みにじった敵を、
単機で壊滅させてくれるというのは、南軍の士気高揚に役立つと思うのですが……。


恐らく、ジロウさんが提案した今回の作戦には、
三つの要素があるのではないでしょうか。
第一には、ジロウさん自身がいっている、ナイアの目的に適わない、
低燃費・低コスト部隊で事態を収束させること。
第二の要素としては、南軍の軍備拡張の為、
シャルエル様には、敢えて出陣しないで貰ったと考えています。
ここからが本題ですが、魔王シャルエルが海魔を全滅させては、
以後の南軍軍拡張の政策にとってプラスにはならないから、
敢えて今回の作戦をとって、シャルエル様には出ないで貰ったのではないでしょうか。
本編でも指摘されていますが、南軍は無敵の魔王の存在の為に、
軍があまり強くなく、その弱点を突かれて今回の事態に陥りました。
ジロウさんが敢えて苦言を呈してきたり、エミリオがそれを声高に主張しても、
無敵の魔王の存在が、軍の拡張を阻んできたわけです。
ここで、また、魔王シャルエルがたった一人で海魔を滅ぼしたら、
南軍の議会の非戦派が、「魔王がいれば軍とかいらない」って、
あれだけの経験をしたにも関わらず、主張しはじめるでしょう。
今後の軍備拡張の流れを押しとどめない為にも、
シャルエル様は留守番になったのではないでしょうか。


第三の要素は、単純に扇動された海魔を、最低限の犠牲で済ませて、
なるべく虐殺するような事態にはしたくなかったのではないでしょうか?
これは、私としてはかなりの美点ではないかと思っているんです。
ただ、もしかすると、彼のこの部分が、
彼自身の生命を奪ってしまうのではないかと、
深刻に危惧しているのです。
誰の話かというと、ジロウさんの事です。
この人、冷徹ではあっても、冷酷ではないので、
海魔を全滅させる提案があったのでしょうが、恐らくは退けているのでしょう。
決断するべき時に決断できない、エセ平和主義者ではなく、
極めて冷静な判断力を持った現実主義の理想主義者という、
空想上の生き物のような、奇跡的な人格を有しているジロウさんです。
第二の要素で、シャルエル様出陣を抑えつつも、
本音としては、出来る限り人死にを出したくなくて、
今回の作戦になったのではないでしょうか。
ルラは彼の戦力ばかりを見て、人柄に触れていませんが、
そこを分析することが出来たなら、ジロウさんを倒す手段が手に入ると思います。


気になる部分で終わりましたが、次巻を楽しみに待たせていただきます。