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実際、冥王神話外伝のメインストーリーは14巻で終わっています。
前の15巻と16巻の話は外伝の外伝とでも言うべき話でしょうか。
これは、冥王神話の聖戦が始まる一世代前の聖戦のお話。
ジャミールで聖衣を修理し後進を育て双子神に備えた祭壇座のハクレイ。
蟹座の黄金聖闘士となり、教皇として策を練り聖戦に望んだ蟹座のセージ。
本編では老人だったハクレイとセージ。
この双子の聖闘士が死力を尽くした戦いの話です。


冥王神話本編の頃から思っていましたが、セージは知将タイプ。
ハクレイはやんちゃな主人公タイプだなーと思っていたら、
そのまんまの若かりし頃でいい意味で笑ってしまいました(笑)。
本編は笑えるような内容ではなかったのですが。
正直、危機のレベルとしては原作の聖域十二宮より状況が悪く、
二名を除いてほとんどの黄金聖闘士が洗脳されるというとんでもない話でした。
この一件の黒幕がタナトスヒュプノス
時系列でいうと、原作聖闘士星矢のおりから243年前が冥王神話本編のストーリーで、
さらに200数十年前の聖戦の時の話が今回のもので、ちょっとこんがらがってきますが、
この聖戦からタナトスヒュプノスの双子神が直接手を下してきます。
200数十年ごとの聖戦であり、紀元前から続けて来たとしても十数回負け続けていれば、
流石に気の長い神々でもヤバイと思ったのでしょう。
教皇を手ずから洗脳しようとするとは。思っていた以上にアクティブです。


このストーリーでは、教皇イティア──前天秤座の聖闘士──は
悪に目覚めて双子神につくのではありません。
200数十年生きて、邪悪な神や魔獣、災厄から人々を守っても、
守った人々や村々が、人によって滅ぼされるという事にむなしさを感じ、
人の善性を信じるという理想を貫き通せなくなった事が心の空隙となり、そこを神に突かれます。
なんとも……私には多くの人を救い、その結論として人の悪性に絶望し、
人の善性を願う事ができなくなったイティアを責めることができませんでした。
結局の所、年月で摩耗したイティアの正義を取り戻させたのは、
若き二人のハクレイとセージという理想に燃える聖闘士だった。
全開で武器を使ってくる天秤座の聖闘士であるイティアが異常に強かったので、
彼を説得するような、かつての信念を取り戻させる戦いしかなかったのでしょう。
読み終わってすっきりするようなものではありませんでした。
ただ、私はこれでいいのだと思います。
冥王神話外伝は本編で命を落とした黄金聖闘士達の活躍が見たい。
そうして始まった奇跡のようなものです。
彼ら12人の、いや13人の聖闘士達は本編で生ききったのですから。
本編を読み直して、このモヤモヤを解消すればいい。
そう思ってページを開くと、おまけのページで……牡羊座が……!?
あ、こ、この男はーーーーッ!?


やってくれたわい! やってくれたわいのう!!!
思わず外伝全部読み直しました(笑)。こういう仕掛けか−!


それはともかく、冥王神話の全ての連載はこれにて終了のようです。
手代木先生、本当にお疲れ様でした。
一ファンとして、一聖闘士星矢を愛する同志として、ありがとうといいたいです。
思えば、当初は2巻までという予定だったのが、
アルバフィカの見事な戦いっぷりで連載が決定して、
あれよあれよと10年ほど経ってしまいました。
逆境を小宇宙を燃やして逆転するかのような活躍。
まさに青銅聖闘士達のようでした。
いまはゆっくりお休みになってください。次の作品も拝読させて頂く事になると思います。