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乙女座の黄金聖闘士は、原作においても無敵に近い強さを発揮し、
冥王神話においては作中で、敗北の影すらなかったほどの人で、
冥闘士を封印する数珠を作るという重要な使命で退場したので、
なんとも上手いやりかただと感心してみていました。
冥王神話終盤で、過去話の登場人物としても現れ、
迷っているとはいえ双子座のデフテロスを翻弄する強さっぷり。
ある意味、外伝シリーズでもどういった立ち位置になるのか、
非常に気になる存在でした。


具体的にどうなったかというと、攻撃的なまでの全編バトルストーリーとなりました(笑)。
こんなにアスミタが戦ってくれるとは思ってなかったので、
ある意味嬉しいのですが、戦いの中でも軸となる部分はぶれておらず、
彼は冥界でこんな事をしていたんだなぁとその超人っぷりに感動しました。
輝火が出てきた事もよかったのですが、
彼が本編のストーリーに繋がる意志の目覚めをするきっかけになったのが、
アスミタとの戦いであった事がなかなか感慨ぶかかったですね。
明らかに輝火が、アルデバランと戦った時より弱いので、
やはり冥闘士は復活する度に強くなっていくのでしょうか。


今回驚いたのは、冥闘士のアタバクがかなり強かったことです。
聖闘士星矢中、天舞宝輪は破られたことがない技なのですが、
今回アタバクが外道な技を用いて、それを破ります。
簡単にいうと、亡者を身代わりにして天舞宝輪を受けさせて、
自分は無傷ですませるというとんでもない真似なんですが(笑)。
そのアタバクに対して、アスミタは一旦破れます。
アタバクが切り捨てた弱者への響感や、苦しみを一切理解しない境地、
その暴欲ともいうべき無慈悲な心の前に、
アスミタが敗北を自ら悟りそうになった瞬間、
その弱者の意地が、アスミタを救います。


最初に書いたように、乙女座の黄金聖闘士は贔屓目にみても、
神以外には苦戦しそうもないレベルの強さです。
まぁ、聖闘士星矢は力の差があっても、精神力+小宇宙で覆してしまえますが。
その隔絶した強さであるアスミタが、強者を自認するアタバクが捨て去った、
誰かへの共感、優しさといった方が分かりやすいでしょうか。
それによって、救われる。明らかにアスミタよりも弱者に救われる。
力を求め、他者を糧として踏みにじり続けたアタバクには、
決して理解できない類の力ではないでしょうか。
最強の黄金聖闘士が、最弱とも言える亡者に救われる。
誰かへの優しさが、誰かを踏みにじる強さ──私はそれを強さと呼びたくはありませんが──、
に対して勝利するというのが、乙女座の聖闘士らしい戦いで、
この外伝を非常に盛り上げてくれたと思います。


ところで、最後のシーンが木欒子の前で終わったので、
一瞬、直後にテンマが来たのかと思って、アスミタ大変だなぁと思いましたが、
聖戦が始まるといってたので、直後はないよなーと思い直し、
一人で色々おかしくなってたのは内緒です(笑)。