10/10


以前、酷評したとおり、私はシビル・ウォーの展開を嫌っています。
ヒーロー登録法の是非を巡って、賛成派のアイアンマンことトニー・スターク。
反対派のキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースが争う。
そのヒーロー同士が、かつての友人が、恋人が、仲間が争うというストーリーに、
キャラクターらしさが押しつぶされたストーリーだったからです。


http://d.hatena.ne.jp/Ridley/20111009


そのせいか、PVを見るまではみることに全く乗り気ではありませんでした。
PVのなにがよかったか? それはスパイディの存在です。
原作のシビル・ウォーでは賛成派についた彼ですが、素顔を明かしたせいで不幸に見舞われます。
その最たる者がメイおばさんが重傷を負わされてしまうことで、
それで悔いたスパイディは反対派のキャップの方へ行きます。
アメリカの人はスパイディ好きなはずなのに、彼は過酷な運命に見舞われすぎてて可愛そうです( ´・ω・`)。
その顛末はともかく、映画世界ではスパイディはこれまで版権の関係で絡めませんでした。
スパイディだけでも見に行こう。そう思って見始めましたが、なんとこれがとんでもない映画でした。


キャプテン・アメリカにハズレなし。キャップの映画はどれも面白いと私が勝手に思ってる法則なんですが(笑)。
キャプテン・アメリカ:ファーストアベンジャー。キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー。
そして、キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー。
アメコミ原作版では粗野で傲慢なキャップ、居丈高で人の話を聞かないトニーとで、
読んでいてどちらにも共感できずシビル・ウォーをやる根本的な意味にすら疑問を抱いていました。
映画はこのサジ加減が絶妙で、これまでのトラブルメーカーでメンタルが弱くて頭のいい天才少年だった社長が、
かなり理性的にヒーロー登録法賛成について、まるで大人であるかのように説いています。
キャップは一見、現実をみないで理想だけを追求しているかのように見えますが、
彼は実際に世界大戦で上の指示が間違うという事を体験しています。
国連であろうとその指示は正しいのか? 国連が罪の無い市民の虐殺を支持したら?
キャップの理念は一貫しています。力無き人々の為に戦うと。
目の前の苦しんでいる人がいるなら、それを救わなければならない。
でも、国連の下に入ったら、命令があるまで動くことができない。見殺しにせねばならない。
社長とキャップの意見は、物別れに終わります。
私が思うに、社長は国連に責任を取らせる為に、ヒーロー登録法を支持したのかなと。
ヒーローたちが彼ら以外どうすることもできない侵略者を倒した。
だが、それに巻き込まれた人達がいて、どう責任をとるのかと詰め寄られている。
なら、国連の指揮下に入れば、なにが起こっても国連の責任の下にある。
つまり、アベンジャーズを守る事ができる、と。
作中では明言されてませんが、甚大な被害に対してアベンジャーズがどう責任をとるか?
という部分が世論として追求されているので、そう考えてもおかしくはないかな、と。


しかしまぁ、私としては国連とその意志を受けた米国国務省の動きは早計だなぁと。
だって、通常兵器がまったく役に立たない敵が現れたのに、
それと戦って撃退してくれたアベンジャーズを非難するとか。まぁ、ウルトロンの話もそうですが。
事態が悪化してない時点での最善の手は、アベンジャーズをサポートする機関を作って、
アベンジャーズと敵が戦ってる間の市民の非難、その後の現場処理をする連中がいればよかったんじゃないかなと。
まぁ、作中でS.H.I.E.L.D.が壊滅してるので、ちょっと難しいのでしょうが。
それをさせないように、今回の黒幕が世論を煽ったので、その一手を打たれた時点で、
今回のストーリーはアベンジャーズの敗北でした。
取りあえず、黒幕について語るとおっそろしいレベルのネタバレになるので黙っておきます。
映画見に行くにしても、DVD・BDで見るにしても、あの衝撃を味わって欲しいので。


最後にこのシビルウォーは復讐の形についての映画であったなぁと。
黒幕も復讐に取り憑かれた男です。
今回初登場のブラックパンサーは、父親をバッキーに殺されたと思い復讐の為に戦います。
社長も最後の最後で真実を明かされ、復讐の炎で供を打つ事になってしまいます。
目的を遂げたのは黒幕です。ですが、彼は虚無でした。
ブラックパンサーは復讐に取り憑かれた男を見て、矛を収めます。
己は復讐の炎で身を焦がさない、と。
社長は燻ったまま燃えつきました。彼の最もナイーブな部分を傷つけたわけですから。
ここからの復調は時間がかかりそうです。


多くの人に痛みを与えて終わったストーリーですが、希望も残されています。
そこは最後の辺りを見て貰えば分かるかと。
次回作がアベンジャーズになるのか、誰かの作品で集結するのかわかりませんが、
マーブル:シネマバースでも最高傑作を見る事ができてただただ満足の一言しかありません。