くそ…カッコいいじゃねェかよ…

ガンダムSEEDASTRAY 1〜3巻

かなり古風なタイプの熱血主人公、ロウ・ギュールを主人公に話が進んでいくASTRAY(道をはずれた)シリーズなのですが、正直、本編よりこちらの方がキャラが立っていますし、面白いのは気のせいなのでしょうか。
ロウ・ギュールはジャンク屋です。だから、軍人としての枷がないため、自分と仲間と守りたい者のために戦うという極めてヒロイックな行動に、正当性を持たせられます。フリーである彼は、軍の規律にも国家にも縛られてはいないのですから。アストレイ3人娘も、こちらでは輝いていますしね(笑)。
かなり個人的に気になっていたことで、ジョージ・グレンは、今の世界の争いを招いた彼自身は、どう考えているのだろう…と。でも、あっさりその答えが、このASTRAYでは明かされます。なにしろ、彼の保存されていた脳が発見され、戦艦に接続されるのですから(笑)。
彼はコーディネイターを、新たな種(恐らくSEED)と旧人類との間にたつ調整者という意味合いを持たせており、その信念を語ることでロウ・ギュールに力を与えます。このジョージ・グレンの言葉自体も、政治家であった頃ならば、問題です。かなり夢想主義的で、現実的に戦争が起こっている時に語っていることも、見識すら疑います。でも、前述したように、語ったジョージ・グレンは地位・立場から解き放たれた、いわば精神だけで存在しているようなものであり、ロウは軍人ではなくジャンク屋であり、彼は個人として戦っています。で、あるならば、ジョージ・グレンの夢想主義的な言葉も、ロウに力を与えうるわけなのです。
原作のガンダムSEEDで、最後までキラ・ヤマトは明確なビジョンを打ち出せませんでした。名前を失念したのですが、ラウ・ル・クルーゼの言っていることも穴だらけなのですが、それにすら自身の理念を持って言い返すことが(正しい正しくないは問題ではなく、思想があるか無いかってこと)できませんでした。それに比べて、ロウは単純でヒロイックではありますが、確固たる信念があります。ただ、彼はそれを信念と思ってはいないのでしょうが。

ただ、このシリーズで気になるのは、叢雲劾とロウ・ギュールの二人の主人公を用意しているのに、ロウが主人公として確立されてしまっているので、劾の出番が少ないってことでしょうかね。ロウがオーブでキラを助けている頃に、一方の劾はザフトで…とか世界の広がりを感じさせるように、離れた場所で二人の主人公が遭遇した事件を解決していく中で、実は裏面ではすべて繋がっていた…とかそういうやり方ができたのではないでしょうか。実際は、ほとんどロウ中心に話が進んでしまって、劾は便利屋として使われてしまってますからね(笑)。まあ、世界の広がりについていえば、最後まで世界の勢力動向などがよくわからなかったのですが、ASTRAYはその点でも本編を上回ってますね。